理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1315
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神経系理学療法
低酸素脳症患者の理学療法経験
*藤井 亮嗣井舟 正秀石渡 利浩上口 絵美川北 慎一郎
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抄録

【はじめに】
低酸素脳症は、窒息・呼吸不全・心不全などの種々の原因により発症し、運動障害、構音・嚥下障害、高次脳機能障害を生じる。今回、心室細動により低酸素脳症を発症した患者の理学療法を経験したので報告する。
【症例紹介】
61才男性、平成17年3月呼吸停止・心室細動の状態でT病搬送される。すぐに蘇生し自発呼吸を認めるが低酸素脳症による意識障害JCS200を認めた。
5月リハビリテーション(以下リハ)目的に当院へ転院、PT・OT・ST開始となる。
【初期評価時】
精神機能面:JCS3、失語、指示理解は不明。
身体機能面:四肢麻痺Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)右上肢3手指2下肢2、左上肢4手指3下肢4。坐位保持困難、起居動作全介助。ADLはBarthel Index(以下BI)で0点、食事は経管栄養、排泄はおむつ内失禁。四肢ROMの維持、起居動作・移乗動作介助量軽減を目標にアプローチを行った。
【経過】
7月、坐位はポジショニングにて保持可能、起居動作・移乗動作中等度介助。右上下肢及び体幹に固縮様の筋緊張異常が認められ今後ROM制限が増悪しないよう注意を要した。ご家族に対して総合リハ実施計画書を説明し、今後の方針を相談した。キーパーソンは妻で今まで2人暮らしだったが長男夫婦がのちに同居予定。自宅退院するには身の回りのことがある程度できればという希望であった。
8月上旬、急性冠症候群、呼吸停止状態にて発見される。ICUへ転室、異型狭心症と診断された。
8月中旬リハ再開、身体機能及び能力に著変は認められなかった。
12月、起き上がりは軽介助、いす座位は自立、移動は手つなぎ歩行。ADLはBIで30点、食事は時間がかかり介助が必要な状態であった。長男夫婦が同居することとなり、介護に協力してくれることとなる。正月外泊を行うにあたり、PT・OT・ST・NS・ケアで現状の能力の把握、必要な介助及び家族指導についてカンファレンスを行い各担当者で家族に対して介助方法の説明指導を行った。また家屋評価もPT・OT・ケア・MSWで行い、ご家族・建築業者と共に家屋改修について検討した。年末から年始にかけて外泊施行される。
【退院時評価】
精神機能面:指示理解の改善。
身体機能面:BRS右上肢4手指4下肢4、左上肢5手指5下肢5。起居動作・移乗動作軽介助。ADLはBIにて35点、食事はほぼ自力摂取、排泄はオムツもしくは尿器で排泄、ほぼベット上の生活ではあるが平成18年3月下旬自宅退院となる。
【まとめ】
本症例では当初ご家族が希望された能力には至らなかった。しかし、各職種からの介助方法の指導、家屋改造等を行ったこと、息子夫婦の協力により、自宅介護が可能であることを認識してもらい、ご家族の希望より低いレベルではあったが自宅退院が可能となった。

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© 2007 日本理学療法士協会
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