理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 231
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骨・関節系理学療法
前十字靭帯再建術後における早期大腿四頭筋筋力強化訓練の検討
*阿部野 悦子西村 樹奈神尾 昌利高原 康弘中嶋 正明
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抄録
【はじめに】前十字靭帯(以下ACL)再建術後のリハビリテーションにおいては、ACL機能の再獲得とともに、ACLに負担をかけず下肢筋力増強を行うことが重要である。大腿四頭筋の単独収縮では脛骨に前方引き出し力が加わり、ACLに過大なストレスが加わる。一般に大腿四頭筋筋力強化訓練としてQuad setting(以下NQS)、SLR(膝伸展下肢挙上訓練)が用いられている。しかしこれらの方法では大腿四頭筋の単独収縮となる。我々は、拮抗筋であるハムストリングスの収縮を自由にコントロールできる大腿四頭筋の筋力強化法を開発した。これは通常のNQSを行う際に対側下肢を挙上して行うものである。ハムストリングスの収縮量のコントロールは、対側下肢に異なる重錘を負荷することにより得られる。今回は、本方法の臨床効果を疼痛と筋収縮量(EMG値)を指標に評価した。
【方法】対象は当院にてACL再建術(半腱様筋、薄筋を使用)を施行した男性6名、女性5名の計11名で平均年齢23.2±6.7歳とした。なお本実験の前にすべての被験者に対して本研究の趣旨を十分に説明し同意を得た。被験者はACL再建術後8週間までの間、1週間ごとにNQS、対側下肢挙上位でのQuad setting(以下MQS)、挙上下肢に2kg、5kgの重錘負荷にてQuad setting(以下MQS2、MQS5)を行った。評価項目は疼痛(VAS)と筋収縮(EMG値)とした。EMG値は、筋電バイオフィードバック訓練装置MM-100(アニマ株式会社)を用いて内側広筋から導出した。NQSのEMG値を元にMQSのEMG値を正規化した値(%EMG)をもとに考察した。
【結果】疼痛は、NQSでは関節内の訴えが多く、MQSでは膝裏の訴えが多い傾向にあった。大腿四頭筋の%EMGは、NQSよりもMQSの方が大きかった。またMQS2、MQS5と錘垂負荷によりさらにMQS2、MQS5は大きくなった。被験者11名中6名はNQSよりMQSの方が筋収縮を行いやすいと答え、5名は変わらないと答えた。
【考察】ACL再建術の症例にMQSを実施したところ、NQSよりもMQSの方が大きな大腿四頭筋の筋活動が得られた。MQSでは、ハムストリングスの同時収縮により脛骨前方引き出し力が抑制され、関節構成体に無理なストレスがかからないため大腿四頭筋の筋収縮を発揮しやすい状況になったものと考えられる。
【まとめ】今回の研究結果はACL再建術後の早期リハビリテーションにおいて、より効果的に大腿四頭筋の強化をすることができることが示唆された。


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© 2007 日本理学療法士協会
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