理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 260
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骨・関節系理学療法
関節可動域制限に対するマイオセラピーの経験
*吉田 一樹野中 一成鎌田 一葉
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抄録

【はじめに】MyoVibによる振動刺激は多裂筋や回旋筋などの深層筋の緊張を緩和し、神経根障害を改善させると言われている。関節可動域(以下ROM)に制限のある症例に振動刺激による治療を実施したので報告する。
【症例1】54歳男性。平成15年3月、右大腿骨遠位部開放骨折受傷し、5月にPT開始し、右膝関節屈曲90°へ改善するも偽関節の為、12月に骨移植とプレート入替え術施行、16年3月PT開始。膝屈曲40°、膝周囲の熱感、腫脹、知覚過敏を認めた。運動時痛が強く、自動運動困難。膝屈曲は50°に留まり6月外来通院となる。熱感、浮腫は残存、右下腿部に冷感、知覚過敏などCRPS症状が診られた。安静時の膝周囲に鈍痛あり、「脚の置き所がない」と訴え有り。膝屈曲70°に改善するもPT効果は持続せず翌日には60°になっており、医師、PTもこれ以上ROMが改善せず、復職困難と判断していた。6月中旬からMyoVibで胸腰椎部の多裂筋に振動刺激による治療を1回/月、計4回施行。浮腫の軽減があり、PT効果も持続の傾向。ROM改善に伴い歩行能力も改善。17年7月、膝屈曲75°で定着。8月には独歩にて職場復帰し、片道45kmを車で通勤し、事務作業を行っている。
【症例2】57歳女性。平成18年3月、右膝関節ACL、MCL損傷。約3週間のギプス固定後、PT開始。右膝屈曲105°、伸展-10°、屈曲時に膝周囲に締め付けられるような痛みと夜間痛有り。膝前面、下腿後面から足関節周辺に浮腫を認めた。約1ヶ月のPT施行にて屈曲140°、伸展-5°に改善。 8月より職場復帰するも15分程の立ち仕事で膝周囲の痛みが生じ、床から物を取る、正座などが困難であった。復帰後には膝屈曲130°付近で推移した。下腿後面の浮腫は残存、正座時には膝後面の短縮痛、足関節前面の伸張痛が強く、持続が困難であった。9月にMyoVibで腰仙椎部の多裂筋に振動刺激による治療を1回施行。膝屈曲145°となり足関節の痛み消失、浮腫の減少、筋柔軟性が増し、正座可能となった。
【症例3】45歳男性。平成18年5月下旬より外傷はなく左肩関節に痛み出現し、激痛が走り、左上肢全体の痛みも出現し、夜も眠れない状態であった。特に治療もせず、左肩関節のROMは屈曲90°で運動時痛が3ヶ月程度続いた。更衣や仕事などの日常生活にも不自由な面があったが、特に治療せずにいた。痛みは軽減したものの左肩周囲筋の凝り、ROM制限屈曲135° 、外転120°、外旋40°が残存した。ROM制限が改善せず、10月17日にMyoVibで胸腰椎部の主に多裂筋に対して振動刺激による治療を施行した。約30分間の治療で、左肩ROMは屈曲165°、外転160°、外旋70°まで改善した。
【考察】多裂筋に対する治療により筋の緊張が緩和し、運動、感覚、自律神経に起きていた異常に対して何らかの効果を示したものと考える。振動刺激による治療は関節可動域制限に対して有効と考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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