理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 311
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骨・関節系理学療法
腰痛患者の座位における骨盤挙上評価は有効か?
上半身質量中心からの腰部反応についての一考察
*竹内 大樹土持 宏之小林 由貴
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抄録

【はじめに】片側に限局した症状を呈する腰痛患者は多い。これらの患者は日常生活の中で、左右重心移動に伴うメカニカルストレスを最小限にし、構造的に安定を保っていると考えられる。そこで今回、片側性に症状を訴える患者に対して骨盤挙上評価を実施し、腰痛側と非腰痛側における上半身質量中心の移動距離比較により、左右重心変位における腰部の反応について考察したので以下に報告する。
【対象】対象は腰部疾患患者(変形性腰椎症・腰椎椎間板症)15名であった。性別は男性1名・女性14名、平均年齢は65.1±11.9歳、平均身長は154.9±9.1cm、腰痛側は右14名・左1名であった。急性期・高度な脊椎変形を呈する者は除外した。対象者には研究の趣旨を十分に説明し同意を得てから実施した。
【方法】1)骨盤挙上動作:測定前に体幹の屈伸・側屈・回旋は起こさないよう指示を与え練習させた。開始肢位は対象者が左右坐圧を均等と感じる端座位(足部非接地)とし、骨盤挙上をランダムに3回ずつ実施させ、ビデオで撮影した。画像解析ソフト(Image J)にて、骨盤挙上時におけるTh7の正中からの左右変位距離を計測したものに100/身長を積算し、データとした。腰痛側・非腰痛側について骨盤挙上時の支持側におけるTh7変位距離を比較した。2)腰椎X-P解析:診断の際に撮影された正面X-Pを使用した。デジタルカメラで撮影し、画像解析ソフト(Image J)にてL1-5間の左右椎間関節距離を測定した。左右それぞれの合計距離に100/身長を積算したものをデータとし、椎間関節距離について腰痛側と非腰痛側とを比較した。
【結果】1)骨盤挙上時の上半身質量中心の変位距離は、腰痛側(非腰痛側挙上時で腰痛側支持)で10.3±1.2cm、非腰痛側で8.5±1.0cmと非腰痛側と比較して腰痛側において有意に大きかった(p<0.05)。2)L1-5間の椎間距離合計は腰痛側で19.5±4.0mm、非腰痛側で20.4±4.0mmと非腰痛側と比較して腰痛側において有意に小さかった(p<0.05)。
【考察】骨盤挙上動作は支持面を支点として挙上側で挙上方向に回転モーメントが生じ、それに拮抗するため支持側で反対のモーメントを発揮させ安定させる必要がある。支持側骨盤を安定させる要素として、下部体幹の深部筋作用が必要と考えられる。今回、上半身質量中心の変位距離は有意に腰痛側支持で大きかった。このような反応は、腰部の軟部組織へのメカニカルストレスを増大させ、疼痛や構造的破綻を引き起こした結果、安定性が低下している結果であると考えられる。X-Pにおける椎間関節の距離測定で腰痛側が有意に小さかった理由は、日常生活において腰痛側へのメカニカルストレス増大に伴い構造変化をきたし、結果としてアライメント変化が生じたと推測できる。
【おわりに】腰痛患者に対する骨盤挙上評価では、腰痛側支持時に上半身質量中心の変位が大きかった。今後更なる研究を進め、その因果関係を明らかにし腰痛予防につなげていきたい。

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© 2007 日本理学療法士協会
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