理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 314
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骨・関節系理学療法
仙骨アライメントに着目した腰部障害の評価
仙骨manipulation前後での重心と臨床所見の変化
*荒木 秀明東 裕一千野 宏花野 雄司盛 允彦岩井 真紀赤川 精彦
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抄録

【目的】
臨床上、慢性腰痛症例において骨盤の左右非対称性が頻繁に観察される。その非対称性と腰痛との因果関係に関する報告も散見される。しかし、骨盤の左右非対称性に伴い生じる仙骨のアライメント異常に対する報告は殆ど認められない。今回は、骨盤非対称性と仙骨アライメント異常との関連性を運動学的に考察し、仙骨manipulation前・後での重心位置の変化、梨状筋圧痛、それと仙腸関節のjoint playを検討したので報告する
【方法】
対象者は年齢が19歳から38歳、平均年齢が24.0歳で寛骨の非対称性に伴い、仙骨のアライメントに異常を来たし、梨状筋に圧痛を認める40例とした。方法は1)寛骨と仙骨の位置触診、2)梨状筋圧痛テスト、3)仙腸関節のjoint play test、4)重心動揺計(Zebris社製、PDM)を用いて静的立位重心を測定した。仙骨異常に適応させたmanipulationを施行後、再度同様に検査を行い、治療前後での比較・検討を行った。研究施行前に全対象者に対して、研究の目的・内容を提示して、同意を頂いた。
【結果】
1)重心点位置と動揺:全対象者とも治療前に認められた重心点の中心からの距離は治療後、有意(P<0.05)に小さくなり中心化を呈した。重心動揺の軌跡も有意(P<0.05)に小さくなった。2)梨状筋の圧痛:全例とも軽減もしくは消失。3)仙腸関節joint play test:治療前、全症例でjoint playに左右差が認められたが、治療後に20例中、15例に左右差が認められなくなった。
【考察】
骨盤の非対称性により両寛骨の間に位置する仙骨のアライメントが異常を呈することは論を待たない。骨盤後傾側で仙骨は相対的に前傾(nutation)、前傾側では後傾(counter‐nutation)する。その結果、仙骨の運動軸は第2仙骨レベル付近での水平横断軸ではなく、歩行動作時などに用いる斜軸へと変化する。静的立位において、仙骨運動軸が斜軸に変化することは腰椎の支持面を成す仙骨上面が傾斜して、脊柱の自動運動は左右対称的に行うことは出来ないことが危惧される。治療前の重心点の非対称性や重心動揺の大きさは、これらの運動学的変化を裏付けるものであった。仙骨manipulationによりアライメント異常が矯正されることで重心点の中心化と重心動揺の安定化を獲得することが出来たことから、静的立位保持における仙骨機能の重要性が示唆された。joint play testの結果から仙骨のアライメントを矯正するのみで、仙腸関節の他動運動に変化が生じた。これは骨盤の非対称性が腸骨と仙骨の相対的位置関係に変化を来たし、joint playに影響を及ぼしていることが示唆された。

【まとめ】
上記結果より、各種理学検査を施行する際、仙骨位置に対しても十分な検討がなされるべきと考える。

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© 2007 日本理学療法士協会
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