理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 883
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骨・関節系理学療法
反復性両膝蓋骨脱臼における保存療法の理学療法経験
*山口 梢橋本 貴幸豊田 和典大西 弓恵村野 勇中安 健小林 公子大山 朋彦矢口 春木瀧原 純秋田 哲野原 希渡邉 敏文岡田 恒夫杉原 勝宣
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抄録

【はじめに】反復性膝蓋骨脱臼の保存的治療の成績は良好とはいえず、脱臼を繰り返す例では観血的治療を行うことが多い。今回、観血的治療による骨端線損傷を考慮した結果、保存的治療を実施した症例について、脱臼回数の軽減がはかれたので考察を踏まえ報告する。
【症例及び経過】14歳・女性.診断名 反復性両膝蓋骨脱臼。2004.12.13右膝窩部に友達の膝が当たり右膝蓋骨脱臼(開始前左膝蓋骨脱臼8回有)、理学療法(以下PT)開始2005.3.30.外来終了。
2005.11.8左膝蓋骨再脱臼、PT再開.2006.6.5PT終了。経過中の脱臼回数(右/左)2/2回。受傷機転の多くが方向転換のKnee-inであった。Patella ブレース装着。スポーツは卓球部に所属。
【X-P所見】両膝蓋骨高位、外方偏位、Q-angle(右/左)30°/20°sulcus angle160°/160°
Tilting angle25°/15°Wiberg分類 両膝蓋骨TypeIII
【PT所見】(2004.12.13)右膝蓋骨脱臼時‐腫張・浮腫著明。膝関節可動域(以下ROM)0°~120°大腿四頭筋MMT2。SLR不能。pain-外側広筋・内側広筋・内側支帯に圧痛・膝屈伸時痛。
(2005.11.9)左膝蓋骨脱臼時-腫張・浮腫著明。膝ROM0°~75°大腿四頭筋MMT2。SLR不能.pain-内側広筋・大腿直筋に圧痛・膝屈伸時痛。その他所見-両側扁平足。MMT両短母趾屈筋・短趾屈筋4。apprehension test両側陽性。ober test両側陽性。Looseness test両側3/7点。両膝自動伸展25°~30°時膝蓋骨の急激な外方移動有。(2006.6.5)終了時所見-両側膝ROM0°~160°lag0°大腿四頭筋MMT5。pain無。視診上左膝蓋骨やや外方偏位。apprehension test両側陽性。ober test両側陽性。
【PTプログラム】(1)内側広筋収縮(クイックストレッチ・低周波・筋収縮フィードバック)(2)外側支持組織伸張(外側広筋・大腿筋膜張筋)(3)テーピング(4)足趾内在筋筋力強化(5)足底板
【考察・まとめ】保存的治療の成績は、諸家の報告によれば再脱臼率15~63%とされ、また膝蓋骨の外方偏位を制御する最も重要な組織である内側膝蓋大腿靭帯(以下MPFL)は脱臼により高率に断裂するとされている。本症例ではMPFLの断裂または損傷に加え、外側支持組織の柔軟性低下によるアンバランスがさらなる脱臼の誘発要因の一つになると考えられた。そのため 保存的治療では、内側広筋斜走線維の強化と外側支持組織の伸張性の確保を中心にアンバランスの改善をはかった結果、脱臼回数を軽減することはできた。今後着目する点として、軟部組織だけではなく骨形態のモデリングを期待した保存的治療の必要性があるのではないかと思われた。本症例は、経過を観察しながらMPFL再建術も検討しているが、今後も総合的視点からアプローチしていくことが大切である。

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© 2007 日本理学療法士協会
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