抄録
【目的】近年、関節鏡視下手術手技の進歩によって半月板損傷の治療法は切除術だけでなく、縫合術をはじめとする半月板温存療法が行われるようになった。現在、関節鏡視下半月板縫合術後のリハビリテーション(以下、リハ)に関する文献は多数報告されているが、その中でもスポーツ復帰に限ったものは散見される程度である。そこで今回我々は、スポーツ選手における関節鏡視下半月板縫合術後のリハの実際を報告する。
【対象および方法】当院において1998年2月~2005年12月までに前十字靭帯損傷などの合併損傷のない半月板単独損傷に対し、関節鏡視下半月板縫合術を行ったスポーツ選手18例19膝{男性15例15膝、女性3例4膝、手術時年齢は14歳~35歳(平均22.1±7.1歳)}を対象とした。これらの症例に対し、スポーツ復帰時期、受傷前および術後1年時の競技レベル(Tegner activity score)、関節可動域、術後合併症の有無について調査した。
【術後リハ】当院では石川らが行った半月板縫合術の基礎研究に基づいてリハを行っている。リハプログラムは外固定を術後約2週間、その後、関節可動域トレーニングやCPMを開始。全荷重は術後4週、ジョギングは術後12週、フットワーク系のトレーニングは術後16週、スポーツ復帰は原則として術後4~5ヶ月で許可している。なお、しゃがみ込み動作や正座などの深屈曲動作に関しては、術後早期から行わないように指導している。サッカー選手に対しては術後4ヶ月前後でボールキックを許可しているが、内側半月板縫合術を行った症例にはアウトサイドキックを、外側半月板縫合術を行った症例にはインサイドキックを慎重に行うよう指導している。
【結果および考察】スポーツ復帰時期は術後5.0±1.5ヶ月であった。Tegner activity scoreは受傷前7.6±1.7に対し術後1年時7.6±1.7であり、全例元のスポーツに復帰した。全例、伸展制限はなく正座は可能であった。半月板修復術後のスポーツ復帰には、それぞれの競技特性と修復半月板にかかる外力とを十分に考慮し、それぞれの競技に即したアスレチックリハのプログラミングが重要である。