理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 931
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骨・関節系理学療法
人工股関節全置換術前後における肩甲上腕リズムの特徴
*矢貴 秀雄唐澤 達典高橋 友明畑 幸彦
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抄録
【はじめに】第41回大会にて,変形性股関節症患者の術前において体幹上腕角60°~120°間での肩甲胸郭関節の動きが,健常人より有意に大きいこと報告した.今回,肩甲胸郭関節の動きが人工股関節全置換術施行により,どのような影響を及ぼすのかを検証する目的で,手術前後で比較検討したので報告する.
【対象・方法】対象は手術目的で当院へ入院した変形性股関節症患者14例28肩であり,これを股関節症群とした.対照群として健常人10例20肩を選んだ.股関節症群の検査時年齢は平均58.8歳(54~83歳)で,男性4例・女性10例であった.対照群の検査時年齢は平均56.1歳(52~84歳)で,男性3例・女性7例であった.
測定方法は,端坐位にて頭部・体幹を固定し,両上肢を同時に肩甲骨面上で自動挙上させ,体幹上腕角30°,60°,90°,120°および150°での体幹肩甲棘角(体幹軸と肩甲棘のなす角度)をゴニオメーターで計測した.なお,股関節症群の測定時期は術前と術後4週とした.
評価方法は体幹上腕角30°~60°,60°~90°, 90°~120°,および120°~150°間での体幹肩甲棘角の変化量を “肩甲胸郭関節の動き”と定義し,股関節症群の術前・術後と対照群の3群間で有意差検定を行ない,危険率0.05未満を有意差ありとした.
【結果】体幹上腕角60°~90°間での肩甲胸郭関節の動きは股関節症群術前が7.3±3.6 °で術後が5.1±2.8°対照群が3.8±2.3°で,術前が術後や対象群より有意に大きく(p<0.01,p<0.01),術後と対象群の間に有意差を認めなかった.体幹上腕角90°~120°での肩甲胸郭関節の動きは股関節症群術前が22.5±6.2°で術後が22.3±6.1°対照群が17.4±5.5°で,術前も術後も対象群より有意に大きく(p<0.01,p<0.01),術前と術後の間に有意差を認めなかった.これら以外の動きに関しては3群間で有意差を認めなかった.
【考察】術後において体幹上腕角60°~90°間で,肩甲胸郭関節の動きは術前に比べ有意に減少していた.この原因として,手術により体幹アライメントが変化したことにより肩甲胸郭関節の動きが変化したのではないかと思われた.今後は骨盤・体幹のアライメントも含め調査していく必要があると思われた.
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© 2007 日本理学療法士協会
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