抄録
【目的】
当院では腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)、腰椎椎間板ヘルニア(以下LDH)で手術を受けた症例に術後2週での退院を目標とするクリニカルパス(以下CP)を導入しており一定の成果を挙げている。そこで今回、バリアンスの検討を行うことを目的とした。
【方法】
当院にて2005年8月~2006年10月までにLCSまたはLDHと診断され手術を行った56症例(LCS 26名、LDH 30名)を対象とした。性別は男性32名、女性24名、平均年齢55歳(17~82歳)であった。術式は開窓術、顕微鏡下椎間板摘出術、内視鏡下椎間板摘出術を行っている症例とし、固定術を行われている症例は除外した。術後在院日数21日を越えた症例をCP逸脱例とした。バリアンスの要因は1.年齢、2.椎間数(1椎間と2~4椎間)、3.内科的・整形外科的な合併症の有無、4.著明な筋力低下(MMT2以下)の有無とし術後在院日数での比較を行った。同様にCP通りの症例とCP逸脱例の比較も行った。著明な動作レベル低下がある症例以外は入院理学療法で終了しており、退院後外来理学療法を継続した症例についても逸脱例として調査した。尚、統計学的検討はスピアマン順位相関係数検定、マンホイットニ検定を用い5%未満を有意水準とした。
【結果】
全症例中の内訳は単椎間39例、多椎間17例、合併症を有する症例は23例(41%)、筋力低下を有する症例は11例(20%)であった。単椎間の平均術後在院日数は13.3日、多椎間は17.3日、合併症無しは11.4日、有りは16.3日、筋力低下無しは12.3日、有りは18.3日であった。術後在院日数と年齢で相関を認めた(p<0.05)。術後在院日数が21日を越えている症例は8例、外来理学療法継続症例は11例であった。CP逸脱例は計16例(28%)であった。内訳はLCS 8例、LDH 8例であった。6例が多椎間の術式であり、7例に合併症、8例に筋力低下を認めた。CP通りの症例とCP逸脱例の比較では筋力低下の有無で有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】
1~4の要因は術後在院日数延長に影響していると考えられた。しかし、平均在院日数から単独ではCP逸脱例にはなりにくいと考えられた。CP逸脱例中6例にて1~4の重複があり、複数の要因が重なることでバリアンスが出現しやすいことが考えられた。このことからそれぞれの要因を考慮し、各症例個別に対応する必要があると考えられた。また、術後外来継続症例11例中6例に下垂足が認められた。これより、動作障害に直結する下垂足のような筋力低下が存在する場合はバリアンスとなりやすいと考えられた。腰椎手術例においてCP通りに理学療法を進める必要はあるが動作障害に直結するような機能障害を有する症例は入院のみならず外来継続し理学療法を実施する必要があると考えられた。
【まとめ】
当院で腰椎手術例のバリアンスについて検討した。