理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 979
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骨・関節系理学療法
特発性側彎症における動的座位バランス評価について
*畠山 和利島田 洋一松永 俊樹三澤 晶子佐藤 峰善渡邉 基起巖見 武裕赤川 利也
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キーワード: 座位バランス, 評価, 側彎症
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抄録
【はじめに】側彎症者は脊柱の左右非対称性により体幹筋の筋活動量や筋反応時間などの不均衡が生じると考えられる.側彎症者のバランス評価は立位や座位での報告が散見されるが,いずれも静的バランス評価が主であった.立位バランス評価は足関節での制御がバランス保持に重要な役割を占めるため,側彎症自体による体幹筋のアンバランスを評価するには不十分といえる.側彎症者の体幹機能を測定するため動的座位バランスの計測が不可欠であるが,計測法そのものが未確立のため十分な検討がなされていない.今回われわれは,秋田大学工学資源学部と共に動的座位バランス計測装置を開発した.本研究の目的は,座面からの外乱刺激により側彎症者の座位姿勢制御に不均衡が生じるか検討することである.
【対象と方法】当院整形外科で開設している側彎症外来を受診した特発性側彎症者33例を対象とした.全例が女性であり,手術歴のあるものや先天性側彎症は今回の対象から除外した.平均年齢は14(10-17)歳,初診時Cobb角は平均30.5(12-51)゜,矯正Cobb角は平均18.8(2-49)゜である.また健常女性13例,平均年齢17(17-19)歳を対照群とした.今回作成した座位バランス評価装置はステッピングモータを6個使用し,リンク底部がスライドすることにより座面の状態が変化する.前後,左右共に最大約40゜の可動域を持っており,外部から座面の角度およびスピードをコントロールできる.また力覚センサーを4つ配置し,圧力中心点(以下,COP)や反力ベクトルを計測可能である.被検者はこの装置上に座位をとり,両上肢を前胸部で腕組みし,3m先の目標物を注視した.下肢からの体幹制御を防止する目的で地面から約10cm足が離れるようにした.座面は最大傾斜5度とし,0.25Hzおよび0.5Hzで左右に傾斜させた.計測時間は25秒とした.体幹の動きを測定するため,磁気式3次元位置センサーを用いた.椎体上に設置した位置センサーと反力データより第12胸椎,第5腰椎にかかるモーメントを算出した.また座位バランス装置よりCOPを計測した.
【結果】COPは0.25Hz,0.5Hz共に単位面積軌跡長,単位時間軌跡長,二乗平均共で有意差がなかった.また,第12胸椎および第5腰椎にかかるモーメントは側彎症者と健常者で差がなかった.
【考察】単位面積軌跡長,単位時間軌跡長,二乗平均はそれぞれ姿勢制御を反映するパラメータであるが,今回の動的座位バランスの計測では側彎症者と健常者では姿勢制御やモーメントで有意差がなかった.これまでの静的座位バランスの計測による報告でも同様に健常者とほぼ変わらないとする報告が散見される.側彎症というアライメント変化により筋アンバランスが生じる可能性があるが,徐々に平衡を制御するための適応能力が向上してくると考えられた.
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© 2007 日本理学療法士協会
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