理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 996
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骨・関節系理学療法
足関節・足部障害の要因の一考察
*森口 晃一鈴木 裕也原口 和史
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抄録
【はじめに】
足関節・足部障害を有するスポーツ選手に対して臨床的な股関節機能評価を実施した。その結果と対象者のうちの1名に対して治療を行った結果から足関節・足部障害の一要因について考察した。
【対象】
対象は下腿、足関節に疼痛を有する高校スポーツ部員の女性4名(A、B、C、Dとする)。競技はA、Bはバレーボール、C、Dはバスケットボール。4名の症状は以下の通りであった。A:歩行時とプレー中の左下腿遠位内側の疼痛、B:プレー中の右足関節内側の疼痛、C:プレー中の両下腿遠位内側の疼痛と右足関節の繰り返し捻挫、D:プレー中の左下腿遠位内側の疼痛。
【評価方法】
股関節機能の評価は、伸展可動域、藤井らが報告した動的Trendelenburgテスト(以下、動的T)、一側膝立ち位保持(3秒間の安定)の可否、側臥位で上側股関節を他動的に最大伸展・軽度外転位に誘導し大腿遠位部に3kgの抵抗を与えた際の保持(以下、外転位保持)の可否を評価した。
【結果】
伸展可動域は、Aは右5°、左0°、Bは右-5°、左10°、Cは右-5°、左-5°、Dは左5°、右10°であった。動的Tは、A、B、Dは疼痛側(AとDは左、Bは右)のみ陽性であった。Cは両側ともに陽性であった。外転位保持ではA、B、Dは疼痛側のみ不可、Cは両側ともに不可であった。一側膝立ち位では、A、Bは疼痛側のみ不可、Cは両側ともに不可で、Dは両側ともに可であった。
【症例供覧】
対象Aのみ理学療法を実施した。
16歳女性。以前よりプレー中に左下腿遠位内側に疼痛あり。平成18年9月初旬から歩行時痛も出現してきたため当院受診し、左シンスプリントと診断される。初期評価にて上記の左股関節機能低下と、左足関節の背屈制限、両足部のアライメント不良が認められた。これらの評価と歩行・スポーツ動作評価から、疼痛は左側方への重心移動時の左股関節内旋、膝関節外旋に伴う後足部の回内ストレスによるものと考え、左股関節機能向上を目的とした理学療法を実施、歩行時痛消失、プレー中の疼痛軽減が得られた。さらに足関節・足部へのアプローチも行い、プレー中の疼痛も消失した。
【考察】
本調査において全例疼痛側に股関節機能低下を示したことや1例に対して行った治療結果から、足部障害と股関節機能には何らかの関係がある可能性が考えられる。
足関節捻挫、シンスプリントに関係する足関節の運動は内外反である。この運動に影響を与えるのは重心側方制動であるが、足関節の構造・機能から足関節主体に重心側方制動を果たすのは困難であり、股関節機能が重要と考えられる。しかし股関節機能が低下した場合、足関節での制動を余儀なくされ、足関節・足部障害を呈するのではないかと思われる。
本調査では、対象者が少なく、また股関節機能低下と足部障害の因果関係を明確にするまでには至っていないため、今後の検討課題としたい。
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© 2007 日本理学療法士協会
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