抄録
【目的】
上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎に関しては10‐17歳の子供に起こりやすく、オーバーヘッドスポーツや体操、重量挙げの選手に多く発生するといわれている。所見としては肘関節周囲の腫脹を認め、腕橈関節部に圧痛を認め、肘関節の可動域制限を認める。当クリニックにおいて肘関節の離断性骨軟骨炎(以下OCD)に対し、モザイクプラスティー(以下モザイク)を施行した4症例の短期成績の報告をするとともにモザイク施行後の固定期間や投球開始時期につき考察することである。
【方法】
2005年4月から2005年12月に上腕骨小頭のOCDにモザイクを施行した野球少年4名、4肘。手術時年齢は14-16歳、日本整形外科学会肘機能評価法(以下JOAスコア)は61-77点、病期分類は三浪分類での分離後期3例、遊離期1例であった。これらの症例に対し、大腿骨外顆より移植骨軟骨柱を採取、上腕骨小頭へ移植した。術後固定期間は2週間とし、その後理学療法士監視下にて自動運動を開始した。スポーツ復帰については真下投げと素振りを術後3ヶ月より開始した。
【結果】
移植骨軟骨柱は1-4本であった。JOAスコアは術後2-4ヶ月で86-96点であった。全例術前の痛みが消失していた。
【考察】
モザイク術後の固定期間、野球の投球開始や完全復帰の時期に関してこれまでの諸家の報告によりばらつきがある。固定期間は1週のものから、4週のものまで報告により異なっていた。投球開始時期に関しても早いものでは3ヶ月、遅いもので12ヶ月となっているが、これらの各報告では投球開始時の投球の距離や強度がまちまちである。また、完全復帰にいたった症例が、必ずしも固定期間が長かったものや、投球開始時期を遅らせた症例ではなかった。このことからも今日に至るまでOCDに対する最適な術後療法というものが確立されていないことがうかがいしれる。われわれもこれまでの諸家の報告に従い術後療法を行っており、これという根拠がないのが現状である。
【まとめ】
OCDに対するモザイクの短期成績は良好であった。術後の固定期間、及び投球開始時期に関しては各種報告があり、今後の更なる検討が必要である。