理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 822
会議情報

内部障害系理学療法
屋外歩行がHbA1cに及ぼす影響について
*柳沢 正也平賀 正純須藤 淳二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】ある程度持続時間が長い有酸素運動は糖尿病の治療に有効であると言われている。今回は、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)で脳卒中片麻痺患者に15分間の屋外歩行を週に1回実施し、その屋外歩行が空腹時血糖値(以下FBG)とHbA1cに影響があるかを検討した。

【対象・方法】72歳、女性、平成17年8月右レンズ核から右方線冠の梗塞と診断された左片麻痺。発症当時Brunnstrom Stageすべて1、平成18年2月までリハビリテーションを受け自宅退院となった。ケアマネージャーのプランによりデイサービス・訪問看護・昼食の配食サービス・訪問リハが導入された。既往に平成2年から糖尿病があり1400kcalの食事制限と薬物療法が開始され、平成13年にインスリン治療へ移行された。訪問リハは退院直後から週に2回、移乗動作の獲得を目標に開始された。初回訪問時評価はBrunnstrom Stage上肢2、手指1、下肢3であった。日中は独居で、主に車椅子での生活で、理学療法士の介助時のみ四点杖と短下肢装具を使用して室内歩行が可能であった。訪問リハは移乗動作練習、室内歩行練習(5m×3回)、関節可動域訓練が主であった。同年4月から訪問リハの回数が週に1回となった。同年7月より歩行練習を屋外へ変更したところ歩行距離約40mに約15分間を費やした。運動強度は自覚的運動強度11点・最大酸素摂取量の50%で、屋外歩行前後の血圧の変動はほとんど見られなかった。また、インスリンはノボリン30Rが朝14単位、夕6単位で8月から朝14単位、夕は8単位に増量になった。

【結果】平成18年4月から11月現在までの検査結果からFBGの各月の平均値(126、134、148、148、148、141、126、117mg/dl)とHbA1c値(7.1, 7.1, 7.0, 6.9, 7.2, 7.3, 6.7, 6.5 %)は屋外歩行開始後それぞれ2ヶ月目以降、3ヶ月目以降に改善しはじめた。TGとLDLは明らかな変化が認められなかった。

【考察・まとめ】今回の症例は運動の効果(消費エネルギー増加・ブドウ糖の筋への取り込みの増加・末梢組織でのインスリン感受性の改善)とインスリン増量の相乗効果により、インスリンの抵抗性が改善しFBGとHbA1cが低下したと考えられる。屋外歩行を実施したことで脂質代謝に比べ糖質代謝が進み、食後の血糖の上昇を抑えられたためFBGの平均値低下の割合に比べHbA1c低下が大きかったと考える。今後は、さらに調査期間を延長し観察検討していきたい。

著者関連情報
© 2007 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top