理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 849
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内部障害系理学療法
重症心身障害児(者)における一回換気量測定方法の検討
*栗田 英明水上 昌文岩崎 信明
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抄録
【目的】重症心身障害児(者)(以下重症児)における呼吸機能の問題は生命予後に直結し、理学療法の介入においても非常に重要な問題である。しかし、重症児の呼吸機能の評価に関しては、その一般的な特性についての報告も少ないのが現状である。そこで今回我々は重症児の安静睡眠時における一回換気量(以下TV)の測定を試みその有用性について検討したので報告する。
【方法】対象は本学付属病院で入院加療中の重症児15名(男児8名、女児7名)。平均年齢10.1±4.7歳。大島の分類は1が13名、2が2名であった。気管切開などの外科的処置はなく、上気道の著しい閉塞を認めるものもいなかった。
方法はミナト社製AS300-Eを用いTVおよび呼吸数の測定を行った。測定は夜間睡眠時または午睡時に行い、姿勢は仰臥位とした。被検者の顔面にマスクを検者が軽く押しつけエアーリークを防いだ。マスク装着直後より5分間連続的に測定した。なお、測定時間は児の状況に合わせ適宜調整した。TVの測定前5分間およびTV測定中に、コーケンメディカル社製PO2/PCO2 monitor9100を用いて経皮的二酸化炭素分圧(以下PCO2)と心拍数を同時に計測した。なお本研究計画は本学倫理委員会の承認を受け、保護者の同意を文書で得た上で実施した。
【結果】TVの値は開始直後から1分までが178.4±45.5ml(平均±標準偏差)、1~2分が192.5±44.5ml、2~3分が197.9±38.1ml、3~4分が198±37.6ml、4~5分が199.5±46.1mlであり、開始2分までは増加したが、有意な差は認められなかった。
マスク装着前の安静状態PCO2は測定開始時40.5±4.1mmHg、5分後40.5±3.8mmHgで、5分間の有意な変動はみられなかった。マスクを装着しTV測定時のPCO2は開始直後から1分が40.6±4.2mmHg、1~2分が40.7±4.0mmHg、2~3分が41.6±4.0mmHg、3~4分が42.4±4.0mmHg、4~5分が43.3±3.6mmHgであり、測定開始2分以降から直線的な増加傾向を示した。3分以降はTV計測前と比較して有意に増加した(p<0.05)。心拍数は、安静時とTV測定時で優位な差は認めなかった。呼吸数はTV測定時に有意な変化は認めなかった。
【考察】今回の結果ではTV測定中にPCO2の増加が認められた。特に開始から3分目以降は2分までと比べ有意な差が認められた。この理由としてマスクおよびトランスデューサー内の容積が死腔になり、呼気を再呼吸するために生じているものと推察された。それに対してTVは開始直後から2分は増加したものの、PCO2が増加した3分以降の増加は有意ではなかった。したがって、TVの増加がPCO2の増加による換気応答によって生じたとは断定できなかった。本法ではTVの測定開始3分前後の測定で、PCO2の著しい上昇を生じない場合には有用な指標となるが、それ以降では死腔の影響があるため呼気、吸気のO2、CO2濃度やTVの値を解析に用いるのは困難であることが推察された。
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© 2007 日本理学療法士協会
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