理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 50
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生活環境支援系理学療法
運動介入が地域在住高齢者の短・長期的な身体活動セルフ・エフィカシーに及ぼす効果
無作為化比較対照試験
*稲葉 康子大渕 修一新井 武志長澤 弘岡 浩一朗柴 喜崇古名 丈人
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抄録

【目的】高齢者に対する運動介入により短、長期的な身体機能と健康関連QOLの向上、維持が図られることが示されている。一方、運動介入で身体機能が改善しても健康関連QOLは変わらない、身体機能と健康関連QOLが改善しても互いに関連が低いという報告もある。先行研究は、自己効力感(Self-Efficacy;SE)がそれらの媒介変数として存在すると報告している。
そこで本研究は、媒介変数としてのSEを検証する前段階として無作為化比較対照試験による身体活動SEの短・長期的な効果を検証することを目的とした。
【方法】対象はA区、B市、C市の地域在住高齢者182名(平均年齢74.2±5.6歳.男性75例、女性107例)であり、除外基準該当者を除いた者を無作為に2群に割付けた。運動介入群は、漸増的高負荷筋力トレーニングを中心とした包括的高齢者運動トレーニングを週2回、対照群には専門家による健康講話教室を月2回、各3ヶ月間実施した。身体活動SEは、虚弱高齢者を対象とした「虚弱高齢者の身体活動SE尺度」を用いた。本尺度は「歩行」、「階段昇り」、「重量物挙上」の3尺度(各5~25点)からなる。測定は、介入前(T1)、介入後(T2)、T2から1年後(T3)の3時点とした。統計的処理は反復測定二元配置分散分析を用い、危険率5%未満を有意とした。多重比較にはBonferroni法を用いた。
本研究プロセスは、東京都老人総合研究所研究倫理委員会の承認を得た。また、対象者には本研究の概要を説明し、書面にて本人の同意を得た。
【結果】182例中、171例が研究に参加し、無作為に介入群86例、対照群85例に割付けられた。T2の測定に参加した者は135例(介入群70例、対照群65例)、T3では118例(介入群61例、対照群57例)であった。
身体活動SEのうち、「歩行」では時間の主効果が認められた(P<.05)。「階段昇り」では、時間(P<.01)、群(P<.05)および時間×群の交互作用(P<.05)が認められた。「重量物挙上」では、時間の主効果が認められた(P<.01)。多重比較の結果、「歩行」では有意にT1<T2,「重量物挙上」では有意にT2>T3であった。交互作用のあった「階段昇り」では、運動介入群で有意にT1<T2, T1<T3であったが、対照群では有意にT1>T3であった。
【考察】運動介入群の身体活動SEは、より高負荷の「階段昇り」において有意に改善し、1年後も介入前より有意に高値を維持していた。一方、対照群では介入前後で有意な改善がなく、1年後では介入前よりも有意に低下していた。これらより、本研究での地域在住高齢者に対する運動介入が、より高負荷の身体活動SEの改善に効果があり、長期効果もあることが示された。
今後、運動介入で身体機能に加え身体活動SEに働きかけることで、より効果的に健康関連QOLを向上させうる可能性があり、その検証が必要である。

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© 2007 日本理学療法士協会
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