理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 362
会議情報

生活環境支援系理学療法
理学療法士の専門性を生かした他職種への情報提供方法について
客観的評価結果を基にした情報提供がケアプラン作成およびサービス提供に対して良好に機能した症例を通して
*平野 康之大森 豊大野 崇志大森 祐三子
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抄録
【はじめに】
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)利用者の介護保険サービスの提供に際して,他職種から理学療法士(以下PT)としての専門的意見を求められることは多々ある.しかし,臨床上,他職種に対して具体的な助言や説明ができていないことを経験する.そこで,今回,他職種への情報提供として,身体機能に関する客観的評価結果をもとに具体的な意見提示を行ったことで,ケアプラン作成やサービス提供が良好に機能した症例を経験したので報告する.
【症例紹介】
症例は,くも膜下出血発症後8ヵ月間にわたる医療機関でのリハビリテーションを実施した後,自宅退院された43歳の女性である.訪問リハ開始時点の身体機能評価では,右下肢に軽度の麻痺症状と感覚鈍麻を認め,両下肢筋力はMMTで3~4レベルであった.歩行能力は,屋内は歩行器を使用し自立,屋外歩行は非実施であった.日常生活動作はトイレと入浴動作が監視であった.また,住環境はマンション4階でエレベーターはなく,スーパーまでは約300m,最寄り駅までは約1kmであった.訪問リハは週1~2回の頻度で,長期目標を「監視下で公共交通機関の利用が可能となること」に設定し,主に筋力増強練習や関節可動域練習,屋外歩行練習を実施した.
【方法】
客観的評価は在宅でも実施可能な指標として等尺性膝伸展筋力体重比(以下膝筋力),ファンクショナルリーチ(以下FR),連続歩行距離を測定した.評価は初回,3,6,9ヵ月の4回実施し,その都度担当ケアマネージャー(以下CM)に結果報告とケアプラン作成やサービス提供に対するPTとしての専門的意見を提示した.意見提示に際して,日常動作可否基準は既存のクライテリアを参考に規定し,膝筋力は平地歩行可能を35%以上,階段昇降可能を45%以上とし,FRは25.4cm以下を転倒リスクが高い例として判断した.
【結果】
‹初回›膝筋力23.8%,FR23.0cmであったことから,専門的意見提示(以下専提)は室内歩行器使用,駐車場での付き添い歩行練習開始とした.‹3ヵ月›膝筋力35.4%,FR31.0cmであったことから,専提はベッド,歩行器の返却と室内独歩許可,自宅周辺の付き添い歩行練習開始とした.‹6ヵ月›膝筋力47.1%,FR31.0cm,連続歩行距離:300mであったことから,専提は階段昇降と自宅周辺の独歩許可,ヘルパー介入による買い物練習開始とした.‹9ヵ月›膝筋力43.1%,FR32.0cm,連続歩行距離: 1kmであったことから,専提は付き添いにて電車の乗り降り練習開始とした.
なお,CMの感想は「数値から回復の様子がよくわかり,ケアプラン作成の参考になった」であり,介入期間中,サービス提供に対する本人・家族からの苦情や転倒等の事故はなかった.
【考察】
PTの専門性をケアプラン作成やサービス提供に生かすための手段として客観的数値データを示すことは,理論的背景が明確で他職種にも理解しやすく,効率的な情報提供手段として有用である.
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© 2007 日本理学療法士協会
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