理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1024
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生活環境支援系理学療法
バックサポート高と座位時間の関係
標準形車いすにおける検討
*平田 学西平 亜希飯田 伸子岡崎 可奈子前田 瞳
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抄録
【はじめに】
バックサポートが平坦な車いすで姿勢が崩れ、苦痛を訴える場面に出会うことが多い。座クッションを敷くと前述のような問題が改善される場合がある。この効果が座面の違いによるものか、相対的なバックサポートの高さの違いによるのかを知るため、実験を行い検討した。
【方法】
対象は身長160~170cmの健常な男女18名であった。被験者は異なる条件で標準形車いすに座り、主観的に「つらくなった」もしくは「姿勢を変えたくなった」時点で終了とした。開始から終了までの時間を計測し、これを座位時間とした。終了とした主観的な理由を記録し、これを終了理由とした。被験者は可能な限り臀部をシート奥まで入れ、バックサポートにもたれ、両手を大腿部の上に置いて座った。条件はa.座クッションなし、b. 5cm硬質スポンジ使用、c. 10cmラテックスクッション使用であった。各条件の順序はランダムとした。条件aに対して、条件b、cは相対的にバックサポート高が5cm低くなっていた。車いすはたるみの少ないスリングシートで、シート幅40cm、シート奥行40cm、バックサポート高38cmであった。座位時間についてANOVAによる検定後、下位検定としてBonferroniを用いた。
【結果】
座位時間の平均値は条件a.600±340秒、条件b.852±597秒、条件c.1059±787秒であった。全体的に5%で有意差があり、下位検定により条件aとb、aとcの間に各々5%、1%で有意差があった。条件bとcの間には有意差がなかった。終了理由は、頚部肩甲帯や胸腰部の痛みや凝りなどの背部痛、臀部の痛みや痺れ、足部の痺れや圧迫感、姿勢の保ちにくさであった。条件aで背部、条件bで臀部・背部、条件cで背部の訴えが多かった。
【考察】
結果から、条件aに比べバックサポートが相対的に低い条件b、cで長く座れていた。バックサポートと胸椎後弯との関係から、条件a では前屈方向へ押し出され、条件b、cではバックサポートにもたれやすかったと考える。一方で少数ではあるがバックサポートが高いほうが長く座っていた被験者もあり、個々の姿勢を観察し対応する必要がある。また、条件b、cに差がなかったことから、今回の条件では座面の違いは座位時間に影響しなかった。他のクッションでは結果が異なることも予想される。終了理由から条件aで背部の訴えが多く、前述の考察を裏付ける結果となった。一方で条件b、cともに背部の訴えがあるのは、条件aより長く座っていたことによる疲労もしくは標準形車いすの平坦なバックサポートの支えの乏しさを表しているのかもしれない。
【まとめ】
3種類の条件で標準形車いすに座り、座位時間の計測、終了理由の聴取を行い、分析した。相対的にバックサポートが低い条件で座位時間の延長がみられた。座面の違いは影響しなかった。
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© 2007 日本理学療法士協会
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