抄録
【はじめに】
高知県士会は,全国の士会に先駆け社団法人化された士会である.社団法人は公益法人に属し,民法34条に基づいて設立され,その設立には,1)公益に関する事業を行うこと,2)営利を目的としないこと,3)主務官庁の許可を得ることが必要であるとされている.
1)とは,積極的に不特定多数の者の利益を実現することを目的として事業を行うことという意味であり,当士会の役割は県民の健康面への貢献による利益であると考える.
そこで保健部は,平成16年度理学療法週間(以下,PT週間)から公益事業の一環として士会活動を行ってきた.
今回,保健部の活動状況の概略と3年間のPT週間参加者の握力・大腿四頭筋筋力測定結果を各年代にまとめたので報告する.
【保健部の活動概略】
平成16年度のPT週間から大規模店舗に来場される県民へのアンケート調査や握力・大腿四頭筋筋力測定を行い,対象者に結果を説明し体力年齢の掲示をし,県民の健康維持・改善への貢献の一環を担ってきた.
【筋力測定について】
対象は,3年間のPT週間に参加した県民600名中,20歳以上の448名(男性:196名,女性:292名)である.握力の測定は,竹井機器工業製GRIP-D,大腿四頭筋筋力は,アニマ社製μTAS F-1で椅座位下腿下垂位における最大等尺膝伸展筋力を測定した.
対象者の握力・大腿四頭筋筋力の平均値は,男女共に全国的な傾向同様,年代が高くなると低値を示した.大腿四頭筋筋力の体重比(%)は年代別,男・女の別に,20歳代85.0±19.8・59.9±20.2,30歳代76.9±27.2・53.2±22.8,40歳代71.2±20.5・53.8±23.7,50歳代61.3±25.9・46.9±15.6,60歳代60.9±24.1・46.9±18.9,70歳以上47.9±26.7・47.5±9.81であった.
【まとめ】
高知県士会保健部では,社団法人としての役割である公益性をPT週間のイベントでの県民保健面への貢献を通じて行ってきた.アンケート調査では,再びこのようなイベントに参加したいと希望するものは86.4%であった.
筋力測定結果は,加齢とともに筋力が低下し,特にADLに影響を与え歩行などの能力にも関係する大腿四頭筋筋力の体重比値は,平澤らの報告より低値を示す年代があった.このことは,日常生活の移動手段で車利用が多い本県と公共交通機関を多く利用する都市圏との違いが筋力低下を生じさせる一因と推察する.
ヘルスプロモーションが意味しているのは包括的な社会・政治的プロセスであり,これらの活動は県民の保健面に貢献することである.それは単に個人的スキルや能力の強化のためのアクションだけでなく,公衆衛生や個人の保健への影響を緩和するように社会・環境・経済的状況を変化させるようなアクションということへの一端を担っていると考える.