理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1074
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生活環境支援系理学療法
地域在住高齢者における運動習慣と身体組成,運動機能の関連性について
*小口 理恵牧迫 飛雄馬加藤 仁志石井 芽久美古名 丈人島田 裕之
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抄録

【目的】近年,健康増進と生活習慣病対策として高齢者に対し習慣的に運動を実施するような働きかけが盛んに行われている.今回,地域在住高齢者の日常的に行っている運動の種類,実施時間および実施頻度と,身体組成および運動機能との関連性を検討した.
【方法】対象者は東京都在住の70歳以上の高齢者とした.対象者の募集は,新聞の折り込み広告を板橋区全域で10万部配布し,介入研究の希望者を募った.今回の研究は介入研究の初期評価のデータをもとに検討を行った.参加希望者には説明会を実施して,同意の得られた者のみ本研究に参加した.なお,本研究は東京都老人総合研究所の倫理委員会からの承認を受けて実施した.除外基準は,高度の疾病や認知障害を有するものとした.調査項目は身体組成としてBMI,体脂肪率,および骨格筋量をInBody(Bio Space社)にて測定した.運動機能測定は膝伸展筋力(膝関節90度での等尺性収縮),Timed Up & Go Test(最大努力),タンデム歩行歩数(最大10歩まで)を測定した.日常的な運動実施については質問紙により運動の種類,1回あたりの実施時間,および実施頻度を面接にて聴取した.調査がすべて可能であった83名(平均年齢75.9±4.3歳,男性27名,女性56名)を分析対象とした.分析は質問紙調査の結果から,運動の種類(スポーツ群,軽運動群)で分類し,身体組成,運動機能測定値を対応のないt検定にて群間比較した.また,各群において身体組成,運動機能測定値と運動実施時間,運動実施頻度の関連性をピアソンの相関係数を用いて検討した.
【結果】運動の種類での分類では,スポーツ群26名(男性8名,女性18名),軽運動群57名(男性19名,女性38名)であった.身体組成,運動機能測定値の群間比較では,Timed Up & Go Testのみに有意差を認めた.また,身体組成,運動機能測定値と運動実施時間,運動実施頻度との関係は,スポーツ群において運動実施頻度と骨格筋量(r=0.43),膝伸展筋力(r=0.51)との間に有意な正の相関を認めた.その他の測定値では有意な関係を認めなかった.
【考察】運動機能を,日常的に行っている運動の種類で分類したスポーツ群と軽運動群に分類して比較したところ,タンデム歩行歩数,膝伸展筋力では有意差が認められなかったが,Timed Up & Go Testはスポーツ群で有意な低値を示した.また,スポーツ群において,運動実施頻度と骨格筋量,膝伸展筋力との間で有意な正の相関関係を認めた.日常的に実施している運動の種類や実施頻度と身体組成,運動機能には関連性がある可能性が示唆された.
【まとめ】何らかのスポーツを実施していた高齢者は歩行機能が良好であり,それらの高齢者の内で高い運動量を確保していた者ほど筋力が高いことが示された.

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© 2007 日本理学療法士協会
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