抄録
【目的】要介護状態で自宅退院すると、ADLの低下をきたすという報告がある。今回自宅退院患者の退院時ADLを、自立度別に分けることにより、介助量の違いが、どのように退院後のADLの変化もたらすかについて検討を行った。
【対象と方法】対象は2004年6月1日~2006年4月1日に、当院から自宅退院した患者256名のうち、調査に関して協力を得られ、退院時にFIM運動項目(全13項目:91点満点:以下FIMM)が50~85であった59名。平均年齢(SD)は73.6(11.2)歳。性別は男性26名・女性33名。疾患の内訳は、脳血管障害35名・下肢骨折14名・脊髄損傷6名・廃用症候群4名であった。方法は退院時に担当看護師と担当セラピストがFIM(全18項目:126点満点)を採点。退院時のFIMMを、辻らによる分類により80~85を屋内歩行群(25名)、70~79をセルフケア自立群(19名)、50~69を半介助群(15名)と3群に分けた(以下ADL分類)。それらの患者に対して、退院1ヶ月後に、セラピストが電話または訪問によりFIMMを採点。ADL分類ごとに、退院後のADLの変化についてKruskal-Wallis検定を用いて分析した。
【結果】FIMMの平均の変化は、退院時74.9、退院1ヵ月後72.3であった。ADL分類ごとの変化は、FIMM平均の退院時と退院1ヵ月後の差が、屋内自立群-1.5、セルフケア自立群-0.6、半介助群-7.5であり半介助群と、セルフケア自立群の間に有意な差を認めた(P<0.05)。FIMMの項目別による変化は、清拭・更衣・階段昇降の低下が著しく、排尿・排便コントロールは若干向上していた。ADL分類ごとのFIMM項目別の変化は、排尿コントロール・トイレ移乗(P<0.05)、浴槽移乗項目(P<0.01)において有意な差を認めた。移乗3項目とも屋内自立群・セルフケア自立群では維持向上が見られたが、半介助群において著明な低下がみられた。
【考察】辻らによると、半介助群は移乗・トイレ動作に介助を要し、セルフケア自立群は入浴・移動は一部介助であるがその他は自立している群である。今回の結果にあてはめると、退院時、移乗動作等に介助を要する、半介助状態の場合、自宅退院後の介助量の増加の恐れがある。今回の結果は退院後比較的早期の段階である1ヶ月後のADLの調査を行ったため、運動機能的な低下というよりは、介助者による介助量の増加が中心であると思われるが、このような介助量の増加は、長期的にみて下肢筋力の低下・廃用症候群が危惧される。
【まとめ】退院後1ヶ月のADLの変化を、FIMを用いて評価を行い、ADL自立度別に変化の特徴を検討し、移乗動作等に介助を要する群において、介助量の増加を認めた。今後さらに長期的な調査の必要性があると考えられる。