理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1135
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教育・管理系理学療法
目標管理と意識変化
*山川 智之
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キーワード: 業務motivation, 目標意識, BSC
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抄録
【はじめに】
最近,目標管理を実施している病院・施設が多くなっている.本論では,リハビリテーション業務の組織的かつ効率的な管理・運営を行うために,セラピスト自身の業務に対するmotivation(以後,「業務motivation」と呼ぶ)が必要であるとの検証を行う目的で,業務motivationの維持・向上に有用なバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard:以後BSCと呼ぶ)の導入による目標意識の変化が業務に対する視点を変化させた結果を得た.
【対象および方法】
対象期間は, 2003年4月~2004年9月をBSC導入前,2004年9月~2006年3月を導入後として各1年6ヶ月とした.人数は.2003年上半期14人・下半期14人・2004年上半期16人と,2004年下半期13人・2005年上半期15人・下半期14人を対象とした.これは,当院のそれぞれPT・OT・STを合計したものであり構成は一定でない.
方法は,BSCの「学習と成長」,「業務プロセス」,「顧客」,「財務」の4つの視点を導入前の目標に当てはめ,それぞれの件数を抽出した.それと導入後の件数をΧ2検定を用い比較した.また,4つの視点と半期ごとに見直す個人的な目標の成果を自己評価および考課者評価との関わりをそれぞれKendallの順位相関検定を用いて示した.
【結果】
「学習と成長」,「業務プロセス」,「顧客」,「財務」の4つの視点は導入前にそれぞれ6件,26件,3件,9件であったものが,導入後には13件,13件,7件,9件となった(p<0.05).また,4つの視点と個人目標の自己評価および考課者評価は,導入前に相関関係を認めなかったが,導入後ではそれぞれ正の相関を認めた(p<0.05).
【考察】
当院では,2002年より人事考課制度の一環として目標管理システムを始めて,その後コ・メディカルを総じた診療支援部にて業務の改善と効率化の目的をもつBSCの本格的な導入を行った.本論結果では,導入前には業務プロセスばかりに偏っていた視点が,導入後にはそれぞれ平坦化した目標設定が可能となった.また,相関関係から個人目標が「財務」への意識が高まったことは,病院の方針に沿った目標であることを各人が自覚することで「業務motivation」の維持・向上が図られたと考えている.個別的な業務の多い改善には,各人の目標を明確にした意識改革のもと「業務motivation」の維持・向上が必要である.
診療報酬改正で厳しい経営の舵取りを強いられている病院や施設の経営者にとって,セラピストが質の高い患者治療を施行するのは至極当然なことと考えている.それとは別に,病院や施設に対して個人個人が付加価値を持ち,そこから高い有益性を生み出されることを経営者は望んでいる.ゆえに1人1人のセラピストには,経営方針に沿った「業務motivation」の維持・向上を図り付加価値を高める努力が今求められている.
今後は個人の目標成果と業務成果について検証をしたい.

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© 2007 日本理学療法士協会
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