理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 61
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理学療法基礎系
荷重時に多方向から加えられる受動抵抗に対する方向依存的筋活動の様態
青木 信裕金子 文成速水 達也金森 章浩和田野 安良
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キーワード: 筋電図, 方向依存, 安定性
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抄録

【目的】荷重位での膝関節内外反・内外旋不安定性は,前十字靭帯(ACL)損傷など重篤な障害と関連すると考えられている。理学療法場面では膝関節安定性を評価することが重要であるが,評価・治療の方法は確立されていない。我々は,方向依存的な筋活動を評価する方法を考案し,開放運動連鎖の肢位での課題を実施してきた。本研究の目的は,閉鎖運動連鎖(CKC)の肢位中に受動抵抗を加えることで,重篤な障害の受傷機転に近い状況での方向依存的な筋活動の様態を明らかにすることである。
【方法】被験者は実験内容について事前に説明し,同意を得た健常男性10名とした。被験者は,床置き型の二次元平面で運動が可能な運動感覚を評価・練習することができる装置(キネステージ)に一方の足部を固定した。CKC課題はスクワット肢位とし,両下肢に均等に荷重をかけた立位姿勢から膝関節屈曲60°,体幹前傾位,骨盤正中位で膝,足先の向きは前方となるよう指示した。重心の移動が起こり不安定な状況となることを模擬するために,スクワット肢位での静止中にキネステージから足部に受動抵抗を加えた。受動抵抗の強さは6N/secで漸増し,最大42Nとした。抵抗の方向は前方から後方(AP),前外側から後内側(ALPM),外側から内側(LM),後外側から前内側(PLAM),後方から前方(PA),後内側から前外側(PMAL),内側から外側(ML),前内側から後外側(AMPL)の8方向とした。受動抵抗実施中は膝関節角度と荷重量に注意を払うことを指示した。荷重量は前方に設置したモニターで視覚的にフィードバックを与えた。筋活動は表面筋電計を用いて測定した。被験筋は,股関節・膝関節・足関節周囲の13筋とした。課題実施前に最大随意的等尺性収縮(MVIC)を実施した。課題中に得られた筋電図信号はMVICを用いて標準化した後,各被験者で方向により相対値化し,方向に依存した筋電図活動の特異性を解析した。
【結果】内側広筋と外側広筋では方向に依存した活動の特徴は認められなかった。しかし,大腿直筋はAMPLで他の方向と比較して高い活動が認められた。内側ハムストリングはPMALで活動が高かったのに対して,外側ハムストリングではPA,PLAM,PMALだけでなく,MLでも活動が高かった。腓腹筋は内側頭ではMLで活動が高かったが,外側頭では方向に依存した活動の変化は明確ではなかった。
【考察】AMPL,MLは結果としてACL損傷の受傷機転といわれているToe-out, Knee-in(TOKI)を模擬した状況と考えられる。この方向の受動抵抗では,大腿直筋,内側ハムストリング,外側ハムストリング,腓腹筋内側頭,長内転筋,薄筋,縫工筋の特異性が高かった。これらの筋がTOKIを防ぐために関連している可能性がある。同様に,ALPM,LMはToe-in, Knee-out(TIKO)を模擬した状況であり,この方向では中殿筋,大腿筋膜張筋の特異性が高く,これらの筋がTIKOの予防に関連する可能性がある。

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© 2008 日本理学療法士協会
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