理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 224
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理学療法基礎系
ギプス固定除去後のラットヒラメ筋におけるheat shock protein 72・25の発現と伸張運動の影響
井上 貴行萩原 竜佑吉川 香菜沖田 実鈴木 重行
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抄録

【目的】我々はラット足関節を4週間ギプス固定した後にギプスを除去し,再荷重を行うとヒラメ筋に筋線維損傷が発生し,再荷重の過程で伸張運動を行うとその発生が軽減されることを報告してきた.しかし,そのメカニズムは不明で,課題となっていた.一方,培養筋細胞を用いた先行研究では伸張運動によってheat shock protein(HSP)72が発現すると報告されており,そのファミリーであるHSP25は筋線維損傷の予防に作用するといわれている.そこで,本研究ではHSP72・25の発現に着目し,伸張運動による筋線維損傷の発生軽減効果のメカニズムを検討した.
【方法】Wistar系雄性ラットを無処置の対照群(C群)と両側足関節を最大底屈位で4週間ギプス固定する実験群に振り分け,実験群は1)固定のみの群(I群),2)固定終了後にギプスを除去し,後肢を非荷重とした状態で4時間飼育する群(IH群),3)ギプス除去直後に伸張運動を行い,4時間飼育する群(ISH群),4)固定終了後にギプスを除去し,1,2,3,5,7日間通常飼育する群(NS群),5)同期間の通常飼育中にヒラメ筋に対し伸張運動を行う群(S群)に振り分けた.伸張運動には小動物用他動運動機器を用い,その日の足関節最大背屈角度から底屈方向へ40°の範囲で,4秒に1回のサイクルの足関節底背屈運動を1日30分間,固定除去直後から麻酔下で実施した.各群の実験終了後は両側ヒラメ筋を採取し,左側は正常筋線維数に対する壊死線維数の割合の計測に,右側はWestern blot法によるHSP72・25含有量の計測に用いた.なお,本実験は名古屋大学動物実験倫理委員会保健部会の承認を得て実施した.
【結果】壊死線維がI群,IH群,ISH群に散見され, NS群ではその発生が顕著であった.一方,固定除去後1,2,7日目のS群の壊死線維数の割合はNS群よりも有意に低値であった.HSP72・25含有量はC群,I群,IH群,ISH群の4群間に有意差は認められず, NS群は固定除去後2日目から増加が認められた.また,S群のHSP72・25含有量は固定除去後も有意な変化はなく,各検索時期でNS群とS群を比較するとS群が低値であった.
【考察】今回の結果より,本実験で用いた伸張運動の負荷ではHSP72・25の発現は認められないといえよう.そして,固定除去後の壊死線維の発生とHSP72・25の発現はNS群がSt群より顕著で,HSP72・25の発現は壊死線維の発生に準拠してみられる可能性が高いと思われた.これらのことから,伸張運動による筋線維損傷の発生軽減効果にHSP72とHSP25の発現が影響しているとは考えにくく,今後は他の因子について検討する必要がある.

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© 2008 日本理学療法士協会
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