理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 437
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理学療法基礎系
股関節伸展制限による歩行の変化についての検討
金井 章斉藤 良太早川 友章吉倉 孝則種田 裕也小栗 孝彦小林 篤史
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キーワード: 股関節, 伸展, 歩行
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抄録
【目的】変形性股関節症は、股関節軟骨に変性、摩耗が生じることで関節に変形をきたす疾患である。それに伴う疼痛、可動域制限、筋力低下により歩行などの動作にも制限が認められ、特に関節症の進行に伴い股関節は屈曲拘縮を生じる。その理由として、股関節内圧の低下、臼蓋被覆の代償などが考えられる。しかし、それに伴う歩行時の股関節についての運動力学的検討は十分に行われていない。そこで今回、股関節に伸展制限をした場合の歩行の変化について検討を行ったので報告する。
【方法】対象は、本研究について説明し、同意の得られた健常男性8名(平均年齢20.1±1.1歳)とした。被験者は、我々の作成した布製の股関節伸展制限装具を着用し、股関節伸展制限無しと有りの2条件で、8mの歩行路を快適速度で歩行させた。計測には、三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製)と6枚のフォースプレート(AMTI社製)を用いた。股関節伸展制限角度の程度は、手すりを把持した立位にて、股関節最大屈曲、伸展の自動運動可動域を計測して確認した。統計学的検討には、T検定を用いた。
【結果】股関節の自動運動可動域は、屈曲では制限無し平均92.7±8.4度、制限有り平均88.9±8.0度と有意な差は認められなかったものの、伸展では制限無し平均13.7±3.8度、制限有り平均-1.7±9.9度と有意(p<0.01)に制限有りで減少した。歩行速度、歩幅、歩行率は、制限無しと有りで有意な差は認められなかった。歩行時の関節可動域は、股関節屈曲では制限有りで有意(p<0.05)に増加し、股関節伸展では制限有りで有意(p<0.01)に減少した。膝関節では、屈曲において制限有りで有意(p<0.01)に増加し、伸展では制限有りで有意(p<0.01)に減少した。足関節底背屈角度には、有意な差は認められなかった。歩行時の関節モーメントは、股関節では屈曲モーメントにおいて制限有りで有意(p<0.05)に低下したが、伸展モーメントでは有意な差は認められなかった。膝関節では、立脚中期に見られる屈曲モーメントにおいて制限有りで有意(p<0.01)に低下したが、伸展モーメントには有意な差は認められなかった。足関節では、底屈モーメントにおいて制限有りで有意(p<0.05)に低下したが、背屈モーメントには有意な差は認められなかった。
【考察】歩行速度、歩調、歩幅維持のために、股関節可動域を屈曲により代償し、それに伴い膝関節は屈曲位となっていた。また、立脚中期から後期にかけての股関節屈曲モーメント、足関節底屈モーメントが低下した一方、立脚中期に認められる膝関節屈曲モーメントが消失し、立脚期中は伸展モーメントが維持されていたことから、推進力の発揮は膝関節により代償されていると考えられた。
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© 2008 日本理学療法士協会
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