理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1049
会議情報

理学療法基礎系
眼球運動トレーニングが立位姿勢制御に与える影響
宮下 大佑
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
臨床の場面では、患者が何かに目を向ける時に立位バランスを崩す場面に遭遇する。ヒトが周囲を認知するときの多くが視覚情報であり、その情報処理の過程には眼球運動や周辺視などの運動視が機能する。立位での認知課題の実施は二重課題条件となり、二重課題が立位重心動揺を大きくすることは先行研究で報告されている。眼球運動においてはその機能が低下することで、ものを見るときに頚や体幹の動きを伴って補おうとすることから姿勢制御に影響を及ぼすと言われている。本研究では健常成人を対象に、眼球運動トレーニングを行うことで眼球運動課題(以下、課題)時の立位重心動揺への即時効果を検証することを目的とした。
【方法】
本研究の趣旨を十分に説明し、同意を得られた健常成人33名(平均年齢25.6±4.8歳)を対象に、「タンデム立位+課題」の二重課題時における重心動揺(ANIMA社製G-6100)を30秒間測定した。課題は目の高さ、前方約30cmに設置したパソコン上に0.5秒間隔にランダムに現れる1桁の数字を口頭にて答えることとし、頭頚部をなるべく動かさないよう指示した。測定は(1)「二重課題のみを2回実施」、(2)「二重課題を2回行い、1回目と2回目の間に眼球運動トレーニングを実施」を行った。疲労や課題に対する慣れの影響がなるべく少なくなるよう、1回目と2回目の間を3分間あけ、また、(1)と(2)を1日以上おいた。眼球運動トレーニングにはスピージョン(アシックス社製)を使用し、課題よりもやや速いトレーニングを2分間端坐位にて行った。測定項目は、(1)と(2)のそれぞれ1回目と2回目の総軌跡長(Length;LNG)、X方向軌跡長(x-LNG)、Y方向軌跡長(y-LNG)、外周面積とし、それぞれ対応のあるt検定にて比較した。分析は有意水準を5%未満とした。
【結果】
検定の結果、(1)ではLNG、x-LNG、y-LNG、外周面積すべての項目に対し有意な差は認められなかった。(2)においては4項目すべてにおいて有意な差が認められ(p<0.01)、健常成人において眼球運動トレーニングにより二重課題時の立位重心動揺への即時効果を認めた。
【考察】
課題以上の速度で眼球運動トレーニングを行ったことにより眼筋機能や情報処理速度が向上したことで、立位重心動揺における即時効果が認められたのではないかと推測する。二重課題の実施においては認知課題訓練による効果が報告されているが、立位重心動揺を変化させるのは認知課題の難易に因るものだけでなく、眼球運動もそれを変化させる一要因であると考える。今回の結果より、眼球運動トレーニングが立位姿勢制御を向上させる1つの手段であることが示唆された。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top