理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1056
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理学療法基礎系
足底板が健常成人の歩行時足圧中心軌跡に及ぼす影響
桜井 進一坂本 雅昭中澤 理恵川越 誠加藤 和夫
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キーワード: 足底板, COP, 歩行分析
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抄録

【目的】
健常者における歩行時の足底圧分布に及ぼす影響は十分明らかになっていない。その背景には健常人の歩行時足底圧分布の多様性が考えられる.足底圧分布の一指標である足圧中心(Center of Pressure:以下COP)軌跡に関しても,荷重が内側や外側へ偏位するものなどが認められ,足底板が及ぼす影響も様々であると思われる.本研究の目的は,歩行時COP軌跡の多様性を考慮し,足底板が歩行時COP軌跡に及ぼす影響についてCOP軌跡のパターンごとに比較検討することである.
【方法】
対象者は,本研究の趣旨を理解し,同意の得られた下肢に整形外科的疾患を有さない健常成人女性80名(平均年齢21.2,18~32歳)とした.足底圧の測定は全て右下肢を対象肢とした.対象者に対して,足底板を使用しない状態(以下non)及び,Dynamic Shoe Insole System(三進興産株式会社)の2軸アーチパッド(以下2軸)と3軸アーチパッド(以下3軸)を使用した状態での計3条件において,歩行時の足底圧を測定した.足底圧の測定には足底圧測定装置(Parotec system)を用い,歩行時の足底面上におけるCOP軌跡を記録した.解析は1歩毎の立脚時間を100%として時間の正規化を行い,COP座標を10%ごとに算出した.全対象者のCOP軌跡の座標データより,対象者をCOP軌跡が内側に偏位する群(以下内側群),外側に偏位する群(以下外側群),対象者全体のCOP軌跡の平均に近似した軌跡を描く群(以下平均群)への3群に分類した.各群内でのnon,2軸,3軸の各条件におけるCOP軌跡の座標を比較検討した.
【結果】
対象者はCOP軌跡により,内側群8名,外側群11名,平均群10名に分類され,残りの51名はいずれの群にも該当しなかった.足底板によるCOP軌跡への影響は,平均群の立脚期 20%にて2軸でnon及び3軸に比較してCOP座標の内側への有意な移動が認められた(P<0.05).また 30%にて2軸で3軸に比較して有意にCOP座標が内側位を示した(P<0.05).外側群では40%にて3軸,2軸でnonに比較して,50%にて2軸でnonに比較してCOP座標の内側への有意な移動が認められた(P<0.05).内側群ではいずれの条件においてもCOP座標の有意な変化は認められなかった.
【考察】
アーチパッド型の足底板がCOP軌跡に及ぼす影響を検討したが,健常人の歩行時COP軌跡の多様性を考慮し,対象者を予めCOP軌跡により分類したため客観的データとして示す事ができた.外側群では足底板使用によりCOP軌跡の内側移動が認められ,COP偏位の改善という足底板療法の有効性を示唆する結果と考えられた.しかし,足底板がCOP軌跡に影響を与えた機序については,接地面積の増大や足部アライメントへの影響などの複合した結果と考えられ,今後様々な要因について検討しなくてはならない.

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© 2008 日本理学療法士協会
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