理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1067
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理学療法基礎系
大殿筋の筋力強化と大腰筋のストレッチングが骨盤傾斜角と重心動揺に及ぼす影響
石崎 祐子池田 菜波窪田 幸生竹井 仁
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抄録
【目的】臨床にて骨盤傾斜角の変化が立位の重心位置やバランスに影響することを経験する。骨盤傾斜角と重心線の変動、骨盤傾斜角に関与する筋の筋力強化後またはストレッチ後各々における重心動揺の変化に関しては諸家による報告がある。今回我々は、大殿筋筋力強化運動(以下大殿筋ex.)と大腰筋ストレッチを組み合わせ、骨盤傾斜角と重心動揺の変化を検討した。
【方法】実験の同意を得た健常者19名(男性7名・女性12名、平均年齢30.4歳)の軸足を対象とした。測定項目は、1.骨盤傾斜角(閉脚立位にてASISとPSISを結ぶ線と水平線のなす角)を水準計(シンワ測定社製マルチレベルA150)にて測定、2.重心動揺(閉脚立位にて1分間測定。アニマ社製重心動揺計GS-10を使用、計測項目は総軌跡長、単位軌跡長、外周面積、矩形面積。)3.大殿筋筋力測定(腹臥位、膝90度屈曲位にて大腿骨遠位端にアニマ社製hand-held dynamometerを用いて測定。5秒間保持×3回実施し最大値を採用)。介入方法は、A群;筋力強化運動群(4週間:大殿筋ex.のみ)、B群;ストレッチ併用群(前半2週間:大殿筋ex. 後半2週間:大腰筋ストレッチを併用)とし、2群は無作為に分けた。両群とも1日1回自主練習を実施。大殿筋ex.方法は腹臥位にてセラバンドを両大腿部に巻き、6秒間伸展位保持×20回を左右各2セット実施。ストレッチ方法は30秒間を左右各3セット実施。開始から2週目・4週目で初回同様の測定を行い、SPSSを用いて二元配置分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)、ウィルコクスンの順位和検定を実施し、有意水準は5%未満とした。
【結果】骨盤傾斜角[°]の平均はA群では有意差を認めず、B群では初回(18.6)に比べ4週目(15.1)で有意に後傾を認めた。大殿筋筋力[kg・m]の平均はA群では初回(5.3)と2週目(5.4)に比べ4週目(6.6)で有意に増加を認め、B群でも初回(5.4)に比べ4週目(6.3)において有意に増加を認めた。重心動揺測定項目は両群共に有意差は認めなかった。
【考察】A群で骨盤傾斜角が変化しなかった理由は、セラバンドを両下肢に巻き大殿筋ex.を実施したため、股関節伸展時に反対側下肢は固定作用により股関節屈筋群が働き、骨盤前傾作用のある大腰筋筋力強化も同時に行われたためと考える。B群ではストレッチ併用により、骨盤前傾作用が弱まり骨盤傾斜角が有意に後傾したと考える。両群で重心動揺が変化しなかった理由は、通常静止立位では股関節近くを重心線が通るため大きな筋活動を必要とせず大殿筋筋力増加の影響を受けなかったためと考える。また重心は股関節・膝関節・足関節各々の方略により保たれており、骨盤後傾方向への変化のような股関節の方略のみでは重心動揺に変化は生じないと考える。今回の研究では、骨盤傾斜角を後傾方向へ変化させるためには大殿筋ex.に大腰筋ストレッチの併用が有用であることが示唆され、骨盤のアライメントを改善するための治療に応用できると考える。
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© 2008 日本理学療法士協会
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