理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1332
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理学療法基礎系
運動肢位の違いが股関節内旋筋・外旋筋出力に及ぼす影響
曽田 直樹堀 信宏大場 かおり長谷部 武久山田 みゆき石田 裕保河合 克尚藤橋 雄一郎田島 嘉人
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抄録

【目的】運動肢位の違いが筋出力に及ぼす影響についての報告は数多くあるが、股関節内旋・外旋筋出力に関しての報告は少ない。股関節内旋・外旋筋の評価や協調性を重視した運動を行う上で運動肢位の違いによる筋出力の影響を把握することは重要であると考える。そこで本研究は、股関節屈曲位と伸展位での股関節内旋・外旋筋出力を測定し、1)運動肢位の違いによる内旋筋出力および外旋筋出力、2)運動肢位の違いによる内旋・外旋筋出力の優位性、について検討した。

【対象】対象は下肢に既往のない健常な成人84名とした(男性65名、女性19名、平均年齢22.5±4.7歳、平均身長168.3±7.2cm、平均体重61.7±9.8kg)。全員には、本研究の趣旨を十分説明した上で同意を得た。

【方法】運動課題は最大等尺性股関節内旋・外旋運動とし、股関節屈曲位(椅坐位)と股関節伸展位(背臥位)での条件で筋出力の測定を行った。その際、股関節内外旋中間位・10°外転位、膝関節90°屈曲位とした。筋出力の測定には、バイオデックス社のシステム3を使用し、各条件でそれぞれ1回測定した。測定は3秒間行い、測定間には10秒間の休息を入れた。代償動作の防止のために、体幹、骨盤、大腿骨をベルトで固定した。両上肢は座面両端の手すり、あるいは支柱を把持した。測定順序はランダムに行った。筋出力は、測定した最大発揮トルクを用い検討した。統計学的分析には、統計ソフトSPSS13.0J for windowsを用い、各条件の比較には対応ある一元配置分散分析を行い、多重比較にはBonferroniの検定を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】股関節伸展位での平均値は、内旋筋出力58.9 Nm/kg、外旋筋出力74.8 Nm/kg 、股関節屈曲位での平均値は、内旋筋出力98.2 Nm/kg 、外旋筋出力80.6 Nm/kg であった。内旋・外旋筋出力ともに、伸展位より屈曲位の方が有意に高い値を示した。また優位性については、伸展位では外旋筋出力、屈曲位では内旋筋出力が有意に高い値を示した。

【考察】運動肢位の違いが筋出力に及ぼす要因には、筋緊張と筋長(長さ-張力曲線)の関係及び、モーメントアーム(支点から筋の力の発揮方向へ引いた垂線の長さ)が影響するとされている。それらの関与は、個々の筋によって異なるとされている。つまり今回の結果は、内旋筋出力に関しては「モーメントアーム」、外旋筋出力に関しては「長さ-張力曲線の関係」、また優位性に関しては「筋作用の逆転」が大きく関与したと思われた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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