理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1503
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理学療法基礎系
自覚的運動強度(RPE)の妥当性の検討
峯松 亮新明 理恵
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抄録
【目的】運動療法を安全にかつ効果的に実施するに際し,運動量を設定することは重要である.運動療法中,常に呼気ガス,心拍数,乳酸値などをモニタし続けるのは困難であるため,運動強度の指標として比較的よく使用されるのが自覚的運動強度(RPE)と心拍数(HR)である.そこで,本研究では,運動負荷試験において,RPE,HR,酸素摂取量(VO2)を測定し,RPEの運動強度の指標の妥当性を検討することを目的とした.
【方法】健常男性18名(23.7±3.1歳)を対象とし,トレッドミルを用いた多段階漸増負荷法にて最大運動負荷試験を実施した.運動負荷試験はWarm up後に開始し,試験中はHRおよび酸素飽和度をパルスオキシメータにて,VO2をエアロモニタにて測定した.HRが10回/分上昇する毎にRPEを聴取し,all out時に乳酸値(LA)を測定した.RPE,HR,%VO2max間の関係を回帰分析にて求めた(p<0.05).また,all out時のRPE,HR,%VO2maxとLA間の相関をSpearmanの順位相関係数として求めた.なお,本実験は,対象者にインフォームド・コンセントを得た上で行った.
【結果】RPEとHR(RPE=-8.973+0.170*HR, R2=0.751),RPEと%VO2max(RPE=4.391+0.135*VO2max, R2=0.748),HRとVO2max(VO2max=-83.311+1.141*HR, R2=0.819)の間の回帰分析は有意であった.また,all out時のRPE,HR,VO2maxとLA間には相関は認められなかった.
【考察】本研究では,RPE,HR,%VO2max間には強い相関が認められた.また,BorgのRPE-HR直線,RPE-%VO2max直線と本研究のRPE-HR回帰直線,RPE-%VO2max回帰直線は近似していた.前者はHR=130で交わり,それ以前は低めの,それ以降は高めの値を示し,後者は%VO2max =85付近で交わり,それ以前は高めの,それ以降は低めの値を示した.両者ともRPEでは「ややきつい」から「きつい」に相当するため,運動場面において,運動を継続するか,休止するかの判断材料として用いるには適していると考えられる.また,60%VO2max以上ではRPEから運動負荷量を推測することが可能と考えられる.以上から,運動療法中における運動負荷量のモニタや運動負荷量の推測において,運動の指標としてRPEを用いることは妥当性があると思われる.
【まとめ】1.健常男性を対象に最大運動負荷試験を実施し,RPEとHR,%VO2maxの関係からRPEの妥当性を検討した.2.RPE,HR,%VO2max間には強い相関が認められた.3.RPEからHR,%VO2maxを推測することが可能と考えられた.4.運動の指標としてRPEを用いることは妥当性があると思われた.
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© 2008 日本理学療法士協会
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