理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1545
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理学療法基礎系
除神経筋に対する伸張刺激はアポトーシスを抑制しない
酒瀬川 恵美小林 由美片岡 亮人縣 信秀宮津 真寿美河上 敬介
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抄録
【背景・目的】細胞の能動的な死といわれているアポトーシスは、除神経によって萎縮した骨格筋に出現する。アポトーシスによる筋核の減少は、筋萎縮と関連があると考えられている。先行研究より、除神経筋に周期的伸張刺激を加えると、萎縮が抑制されることがわかっている。この筋萎縮抑制のメカニズムにはアポトーシスの抑制が含まれている可能性がある。そこで本研究では、除神経筋に周期的伸張刺激を加え、筋萎縮を抑制した場合に、筋核のアポトーシスが抑制されるかどうかを調べた。
【方法】8週齢Wistar系雄性ラット9匹を用いる。ラット6匹の両側坐骨神経を切除し、左ヒラメ筋には周期的伸張刺激を行い(除神経+伸張刺激群)、右ヒラメ筋には行わなかった(除神経+非伸張刺激群)。また、残りの3匹は、両側坐骨神経を露出させるが切除は行わない偽手術を施行した(偽手術群)。ヒラメ筋に対する周期的伸張刺激は、足関節底屈・中間位保持を5秒周期で繰り返すことにより行い、除神経術の翌日から1日1回、15分間、13日間毎日施行した。除神経術から14日後にヒラメ筋を採取し、相対重量(筋湿重量/体重)を測定した。採取した筋の凍結横断切片を作成し、H-E染色後に筋線維断面積の測定をした。またTUNEL染色によって筋核のアポトーシス発生頻度を評価した。このとき同時に、DAPI染色で核を、dystrophin染色で形質膜を染色し、TUNEL陽性核が筋線維の核であることを確認した。なお、本実験は本学動物実験委員会の承認を得て実施した。
【結果】相対重量、筋線維断面積において、除神経+非伸張刺激群(相対重量:0.19±0.02mg/g、筋線維断面積:842±128μm2)は、偽手術群(0.36±0.02mg/g、2425±287μm2)に比べ有意に小さかった(p<0.01)。さらに、筋線維断面積において、除神経+伸張刺激群 (0.20±0.02mg/g、1135±128μm2) では、除神経+非伸張刺激群に比べ有意に大きかった(p<0.05)。一方、筋線維1000本中のTUNEL陽性核数において、除神経+非伸張刺激群(2.81±1.72個)は、偽手術群(0.32±0.42個)に比べ有意に多かった(p<0.05)。しかし、除神経+伸張刺激群(3.60±2.25個)と、除神経+非伸張刺激群に有意な差は認められなかった。
【考察】除神経により筋萎縮と、筋核のアポトーシスが生じることを確認した。除神経術の翌日から13日間の周期的伸張刺激を加えたところ、筋萎縮は抑制されたが、筋核のアポトーシスは抑制されなかった。したがって、除神経筋への伸張刺激は筋萎縮を抑制するが、筋核のアポトーシスによる筋萎縮を抑制するのではないことが示唆された。
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© 2008 日本理学療法士協会
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