理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1555
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理学療法基礎系
足底感覚の特徴と加齢による影響
Semmes-Weinstein Monofilamentでの検討
山崎 和博村上 恒二
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キーワード: 触圧覚, 足底, 加齢
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抄録

【目的】足底感覚は加齢により低下しバランス機能に影響を与える。このため高齢者の転倒との関連も報告されており、臨床上足底感覚の検査は重要である。しかし、足底全体を詳細に調査した報告は少なく健常者の基礎的情報は少ない状況である。そこで、本研究では客観的で糖尿病性神経障害のスクリーニング検査でもその有用性が報告されているSemmes-Weinstein Monofilament(以下SWM)を用い、健常者の足底全体の詳細な触圧覚閾値と加齢による閾値の変化を検討し基礎的情報を得ることを目的とした。
【対象】対象は中枢および下肢末梢の神経障害がなく、足部に変形のない健常女性57名であり、若年者15名(23.9±2.2歳)、中高年者18名(49.7±6.7歳)、高齢者24名(80.6±4.7歳)の3群とした。なお、対象者には本研究の内容を説明し、書面にて同意を得た。
【方法】測定にはSW知覚テスター(酒井医療株式会社)を用いた。SWMの構成はNo1.65~6.65の20本とした。測定部位は、両足底の第1~5趾、第1~5中足骨頭部、中足部の内側・中部・外側、踵の28ヵ所とした。各部位は3回刺激し、3回とも知覚可能な触圧覚閾値を調べた。SWMにより得られた閾値は、SWM値(Log10 Force)で比較を行った。各部位で左右の比較にはWilcoxon符号付順位和検定、SWM値と年齢との関係にはSpearmanの順位和相関分析、3群の比較にはKruskal-Wallis検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】各群で各部位の左右差は認められなかった。年齢とSWM値の間には全ての部位で正の相関が得られた(p <0.0001,r = 0.617~0.843)。各部位で若年者、中高年者、高齢者の3群に優位な差が認められた(p <0.01)。 SWM値の中央値は、若年者の最低値が3.22(第2~5趾、中足部の内側部・中部)、最高値は4.08(踵)であった。中高年者の最低値が3.61(中足部の内側部・中部)、最高値は4.31(踵)であった。高齢者の最低値は4.17(第2~5趾。中足部の内側部)、最高値は4.74(踵)であった。 各群で足趾は第1趾、中足骨頭部は第1中足骨頭部、中足部は外側部の閾値が高い傾向にあった。
【考察】触圧覚閾値が最も高い部位は踵であった。足趾、中足部も含め閾値の高い傾向にある部位は、歩行時などに荷重を受け皮膚が肥厚しやすい部位である。閾値が最も低い部位は中足部の内側であった。この部位は土踏まずといわれ、荷重の影響が少ない。足底の触圧覚閾値には荷重による皮膚の影響が考えられた。また加齢により閾値は上昇し、高齢者では若年者の最も高い閾値のSWMを感知できないほどの著しい感覚機能の低下が示された。本研究では足底感覚についての有用な基礎的情報を示せたと考える。

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© 2008 日本理学療法士協会
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