理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 245
会議情報

神経系理学療法
金属支柱付長下肢装具における平成18年度医療保険改正前後の比較
菊池 隼荻野 雅史松谷 実榎本 陽介塚田 陽一齊藤 理恵強瀬 敏正野内 宏之田中 直
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
当院は脳卒中患者を中心とした急性期病院であり,片麻痺患者に対し治療用装具の処方・作製を積極的に取り入れている。平成18年度の医療保険改正に伴い,急性期から回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)へ転院可能な期間は3ヶ月から2ヶ月へ短縮され,急性期における在院日数は短縮を余儀なくされた。そのため,装具処方・作製は以前にも増し迅速な対応が望まれる中,当院では症状が日々変化する脳卒中急性期患者に対し,適切な装具処方・作製の時期に苦慮する傾向がある。重症例においては,適応や適切な処方時期の見極めが難しく装具処方・作製に消極的となることが予想される。そこで,今回は当院で重症例に処方された金属支柱付長下肢装具(以下KAFO)に焦点をあて,転院可能な期間の短縮がKAFO処方・作製に与える影響を把握するため調査したので報告する。
【対象と方法】
平成16年3月から平成19年11月までに,脳卒中の診断を受け医師よりリハオーダーされKAFOを処方した23例を対象とした。その内,回復期リハ病棟へ転院可能な期間が3ヶ月であった平成16年3月から18年3月までの処方例をA群,回復期リハ病棟へ転院可能な期間が2ヶ月となった平成18年4月以降の処方例をB群とした。調査項目は,装具処方数,発症からリハ開始までの期間,リハ開始から装具処方までの期間,KAFOから金属支柱付短下肢装具へカットダウンするまでの期間とした。処方数以外は各々両群間をt検定にて比較し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
A群は9例で,平均年齢70.8±7.5歳,男性8例,女性1例であった。B群は14例で平均年齢68.5±10.5歳,男性7例,女性7例であった。発症からリハ開始までの期間はA群10.0±5.7日,B群8.0±4.0日で有意差を認めなかった。リハ開始から装具処方までの期間はA群26.0±19.5日,B群18.0±11.5日で有意差を認めなかった。装具処方からカットダウンまでの期間はA群25.0±8.7日,B群16.5±6.7日とB群で有意に期間の短縮を認めた。
【考察】
平成18年3月を境に回復期リハ病棟へ転院可能な期間が短縮された結果,KAFOの処方に消極的となり,装具処方数の減少が予想された。当院では,その予想に反し処方数は増加していた。KAFO処方・作製に取り組む姿勢には平成18年度の改正は何ら影響なく,むしろ積極的に取り組めているとも考えられる。しかし,改正後は以前にも増し迅速な対応が望まれる中,リハ開始から装具処方までの期間に短縮を認めず今後の改善すべき課題である。カットダウンまでの期間は短縮を認め良好な結果となった。これについては機能的予後を見極め将来カットダウンの可能性を考慮し処方したこと,またKAFO使用時は常に膝の支持性の状態を評価しカットダウンの時期を早期に把握できた結果が期間の短縮につながったと考えられる。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top