理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 262
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神経系理学療法
脳血管障害患者に対する振動刺激付きバランス機器による評価・トレーニング方法の検討
第2報
春名 弘一伊藤 麻美鈴木 創須田 亙塚田 鉄平稲田 亨田中 敏明杉原 俊一白銀 暁大山 陽平前田 佑輔泉 隆武田 秀勝
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抄録

【目的】我々は第42回日本理学療法学術大会において、振動刺激付きバランス機器を用いたトレーニングに関して振動刺激を用いることにより患者が重心位置変化を容易に認知し、バランス制御可能であることを報告した。今回は、バランストレーニングに伴う麻痺側の経時的変化を主としてバランス評価を本機器で分析検討し、かつ、患者からの内観報告を行うことにより本機器の有益性を検討した。
【対象】脳血管障害後遺症による片麻痺患者で直立位が自立しており、本トレーニングを4週間以上継続可能であった11名(平均年齢61.5歳)とした。対象者には実験内容について十分に説明し同意を得た。
【方法】実験機器として、重心動揺計上の前後左右圧中心軌跡(COP)変位に関して足および腰部への振動刺激により対象者にCOP移動を注意喚起するシステム(共和電業、PCD-300A)を用いた。評価として(1)重心動揺計によるロンベルグ肢位での静止立位20秒間保持、(2)重心動揺計によるロンベルグ肢位保持での前後左右への最大重心変位(以下クロステスト:mm)、(3)Timed Up and Go test(以下TUG:秒)、以上3項目とした。また(1)の分析項目としては軌跡長(mm)、実効値面積(mm2)を週1回計測した。バランストレーニングとしては(2)により評価した各4方向の最大値以上まで重心移動すると振動が生ずるよう設定し、振動が生じる位置まで各方向に重心移動するトレーニングを1回につき10分間、週に3回以上実施した。評価としては最大重心変位値(mm)とした。患者の最大移動位置を知らせる振動刺激を与える条件では、検者が設定した設定値と計測値の誤差(E:設定値-計測値)および変動係数を振動刺激の有無で比較した。また、患者の内観報告として、振動刺激および本機器の満足度調査を実施した。統計処理はt検定,分散分析法、多重比較検定を使用した。
【結果】分析項目の4週間の経時的変化は、軌跡長において有意に改善した。実効値面積は有意差を認めなかった。クロステスト合計値は有意に改善した。左右方向では麻痺側方向でより優位に改善する傾向であった。TUGは有意に改善が認められた。検者によって決定された重心位置へ患者自らの移動を行った場合の設定値と計測値の誤差(E)では、振動刺激有りが振動刺激無しに比べ、有意に小となった。重心位置の変動係数では、振動刺激無しが振動刺激有りに比べ1.5倍程度となった。本機器に関するトレーニングの患者内観調査では、目標を定めるのに非常に有効であったが82%、有効であったが18%であった。
【考察】本機器によりバランス能力に関わる麻痺側への重心移動の経時的改善度評価が可能であった。振動刺激有りでは目標とする重心位置への随意的制御の精度が向上し、内観調査より良好な結果を得た。よって、本機器は重心位置変化を経時的に注意喚起するフィードバックシステムとして応用できる可能性が示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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