理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1572
会議情報

神経系理学療法
心臓血管術後の多発脳出血により視覚・聴覚・発達障害を呈した小児の特徴
竹村 柾俊, 山本 弘昭, 坪田 秀樹
著者情報
キーワード: 小児, 視覚障害, 発達障害
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】先天性心臓血管奇形は生命予後に関わるため、乳幼児でも手術を施行されるが、生体が非常に未熟なため手術はハイリスクであり、稀に術後脳障害を合併することがある。今回、心臓血管術後に多発脳出血を併発し、著明な運動機能障害、不随意運動を呈したが、数ヶ月で徐々に改善傾向がみられ、視覚障害などにより特異的な発達を呈した症例を経験したので報告する
【症例】2005年7月12日、39週2826gにて出生。心雑音から心室中隔欠損症と診断。その後諸検査によりFallow四徴候に対し、1歳6ヶ月で手術する方針となる。発達段階は問題なく経過していた女児である。
【経過】2007年1月10日Fallow四徴候根治術後に多発脳出血を併発。画像所見より両側の後頭葉を中心に前頭葉などに多発脳出血が認められた。1月31日よりICUにて理学療法開始(関節可動域運動と背もたれ座位より行う)。発声なく、視線も合わず、全身弛緩状態、四肢不随意運動みられる。2月27日寝返りや腹臥位も積極的に導入するが活動性低く上肢を動かすのみ。3月27日定頚。腹臥位にて頚部伸展が出現。療法中は泣くことが多い。4月13日視力はない様子で、手で探索し口でしゃぶる行動がみられる。4月17日、起立しようとするがすぐ倒れる。四つ這いは嫌がり不可能。頭部もあまり挙上できず。5月1日、遠城寺式発達検査にて移動1歳2ヶ月、手指の運動6ヶ月、社会性1~7ヶ月、言語1~3ヶ月、と移動以外は著明な低下。5月10日、自由に歩き回れるが呼びかけには反応しない。立ち止まり、その場でぐるぐる回る、歩くをくり返し障害物にぶつかる。5月30日退院、以後外来通院。6月、哺乳瓶で自ら飲める。食事は全介助。在宅では歩き回れるがリハ室では障害物にぶつかるため常に監視が必要。7月、歩き回る時に障害物を若干避けられるようになる。8月、両手で玩具を遊べるがすぐに噛んでしまう。9月、自ら人に寄っていく、呼びかけに反応することがある。歩きながら障害物にぶつかることはほとんどなくなる。ただし、歩き回る以外の外界への興味に乏しく、物品を把持して遊ぶことがあまりみられない。
【考察】乳幼児の発達に視覚情報は非常に重要な因子である。2歳までの視覚障害児は、特に発達へ影響を及ぼすといわれており、手指運動や食事の遅れが特異的といわれている。本症例は、発症後に著明な運動機能障害がみられ、4ヶ月ほどで歩行可能になるも、特に視覚障害の影響で手指運動の遅れ、更に前頭葉障害の影響で社会性の遅れ、聴覚障害の影響で言語の遅れが著しく、特異的な発達の遅れを呈している。アプローチとして、残存する感覚入力を活用し、手の協調性、抗重力姿勢及び起居動作を誘導・促通した。発症後6ヶ月以上経過したが、視聴覚に若干の改善がみられ、驚異的な回復をみせている。この様な脳障害児の報告は非常に少なく、今後もデータの蓄積・検討が必要である。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top