理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1574
会議情報

神経系理学療法
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者におけるsniff nasal inspiratory pressureとpeak cough flowとの関連
山崎 岳之上出 直人水野 公輔隅田 祥子平賀 よしみ福田 倫也荻野 美恵子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)は、呼吸筋の筋力低下に伴い呼吸機能障害が出現する。ALSに対する呼吸機能の評価としては、横隔膜の筋力と関連する鼻腔吸気圧(sniff nasal inspiratory pressure:SNIP)や喀痰喀出能力を反映する最大呼気流速(peak cough flow:PCF)などが用いられている。しかし、ALS患者におけるSNIPとPCFとの関係は明らかとされていない。そこで本研究では、ALS患者におけるSNIPとPCFの関連性を検討することを目的とした。
【対象】
ALSの確定診断を受けた患者24名(男性14名・女性10名)を対象とした。対象患者の平均年齢は65.2±10.6歳、罹病期間は2.6±3.0年、発症型は上・下肢型16名、球麻痺型8名であった。
【方法】
SNIPは安静呼気終末位(機能的残気位)から最大努力で鼻腔から吸気を行なった時の鼻腔内圧を口腔内圧計を用いて5回測定した。PCFは最大吸気位からの最大咳嗽時の流速をピークフローメータを用いて3回測定した。測定肢位は対象者にとって最も安楽な肢位を選択し、座位または臥位にて測定した。また、疲労に注意して測定間に十分な休憩を取り入れた。基礎情報としては、測定時点での球麻痺症状の有無を調査した。統計処理には測定したSNIPおよびPCFの最大値を採用し、SNIPとPCFの関係はpearsonの相関係数を用いて検討した。なお有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者のSNIP平均値は34.8±18.2mmH2O、PCF平均値は241.4±132.1ℓ/minであった。SNIPとPCFとの間には有意な正の相関(r=0.567)が認められた。さらに、球麻痺症状を有するとSNIPやPCFなどの呼吸機能検査値が低値を示し、正確な値を示さないことがあるため、球麻痺症状を有する患者におけるSNIPとPCFとの関連も検討したところ、有意な正の相関(r=0.562)が認められた。
【考察】
ALS患者においてSNIPとPCFは関連し、SNIPが低下するとPCFも低下する傾向があることが示唆された。また、球麻痺症状を有する患者においても同様の結果が得られたことから、球麻痺を有する患者においても同様の傾向があると考えられた。すなわち、ALS患者の呼吸機能の評価として、SNIPを測定することで、咳嗽力の変化をある程度推測し、肺炎のリスクの一つの指標とすることが可能であることが示唆された。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top