理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1620
会議情報

神経系理学療法
回復期リハビリテーション病棟における脳血管疾患患者の転倒の分析
長瀬 泰範永見 直明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】転倒事故の分析は、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)における転倒防止策として重要である。当院の回復期病棟では、個々の事例検討は実施されているものの、外的(環境)要因の把握は十分行なわれていなかった。今回、過去1年間の転倒事故レポートを集計し分析を行った。検証事例を転倒が1件のみの症例群(以下、1件群)と2件以上複数件の症例群(以下、複数群)に分類し、事故発生状況の比較を行うなかで危険因子の検討を行なった。
【対象と方法】2006年10月から2007年9月までに回復期病棟で報告された転倒事故レポート(107件)から、夜間せん妄が強く服薬コントロールが不良で多数の転倒を繰り返した1例(15件)を除外した、脳血管疾患患者の転倒事例76件を対象とした。
転倒の件数から、1件群と複数群の2群に分類し、内的要因(性別、年齢、麻痺側)と外的要因(発生場所、入棟日から転倒までの期間、転倒した時間帯)の比較を行なった。全ての統計処理にはカイ二乗検定を用いた。
【結果】転倒事例は76件中、1件群31件31名、複数群45件16名(1名平均2.8件±1.51)であった。内訳は、男性33名、女性14名、平均年齢72.3±10.0歳、左片麻痺22名、右片麻痺52名、両側麻痺2名であり、それぞれ2群間に差がなかった。発生場所は2群とも自室・ベッド周囲が最も多く61件であった。30日毎にみた入棟日から転倒までの期間では、2群とも30日以内に多く発生していた(p<0.05)。転倒した時間帯では2群とも8:30~9:30の時間帯に多く発生していた(p<0.05)。
【考察】入棟日から転倒までの期間は先行研究とほぼ一致する。30日以内の転倒件数が多い要因として、環境の変化への不適応や、医療スタッフの評価が不足していることなどが考えられる。発生時間は朝の時間帯に集中しており、マンパワーが低下するなど当院の回復期病棟業務システムに課題があると考えられる。
今回の分析結果では、転倒件数が異なる2群間であるが内的要因及び外的要因共に差が生じなかった。このことは、転倒件数の多かった期間や時間帯が、病棟業務システムなどの外的な危険因子として普遍性を持つことが示唆された。
今後、継続的に危険因子の検討を行っていきたい。

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top