抄録
【目的】膝前十字靭帯(ACL)損傷などの外傷には、関節の固有感覚が深く関わっているといわれている。従来非荷重位での関節位置覚測定が行われているが、損傷時は荷重負荷があるため、荷重位(CKC)での関節位置覚測定は重要であろう。ACL再建側と非損傷側において、伸展位からの屈曲時の再現性と屈曲位からの伸展時の再現性を測定した報告はあるが、筋活動や負荷の違いを考慮したものはない。本研究は、膝関節の運動方向の違い、負荷の違いによる関節位置覚および筋活動の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は膝に既往のない成人女性11名(年齢22.8±1.6歳)とした。膝関節位置覚測定にはMRシステム・スクワット(Monitored Rehab社)を用いた。測定は左下肢で行い、まず膝関節の位置を記憶させ、続いて閉眼にて再現させた。目標角度は膝関節屈曲45°とし、負荷を5kg、50%RMおよび80%RMとした。運動方向は膝関節90°屈曲位からの伸展を伸展方向、膝関節伸展位からの屈曲を屈曲方向とした。再現した位置と記憶した位置の差を絶対誤差(Absolute Error:AE、cm)で算出し、各負荷における運動方向間、および各運動方向における負荷条件間で比較した。筋活動の測定にはPersonal-EMG(追坂電子機器社)を用い、導出筋は内側広筋(VM)、外側広筋(VL)とした。デジタルビデオカメラとEMGを同期させ、膝関節運動が安定する直前1秒間の筋活動をRMSで算出した。各筋の最大随意等尺性収縮時のRMSを100%として相対化し、各筋の%MVCを各負荷における運動方向間、および各運動方向における負荷条件間で比較した。統計学的検定には、二元配置分散分析を用い、危険率5%未満を有意とした。なお本研究はH大学大学院保健学研究科倫理審査委員会の承認を得て行った。
【結果】負荷5kgでのAEは屈曲方向、伸展方向でそれぞれ0.69cm、0.95cm、50%RMではそれぞれ0.93cm、0.72cm、80%RMではそれぞれ0.62cm、0.82cmであった。すべての負荷で屈曲方向と伸展方向のAEに有意差はなかった。また、負荷の違いによるAEの変化はなかった。筋活動は、80%RMにおいてVLが伸展方向で屈曲方向より有意に高くなった。屈曲方向ではVMの筋活動が50%RM、80%RMで5kgより有意に高くなり、VLの筋活動が80%RMで5kgより有意に高くなった。また伸展方向ではVMの筋活動が5kg、50%RM、80%RMの順に高くなり、VLの筋活動が50%RM、80%RMで5kgより有意に高くなった。
【考察】関節位置覚については、運動方向や負荷の違いによる変化はなかった。筋活動については、80%RMにおいて求心性収縮となる伸展方向でVLの活動が高くなっていた。VM、VLとも、運動方向にかかわらず、負荷が大きくなると筋活動が高くなった。本研究の結果より、運動方向や負荷の違い、筋活動量の違いは関節位置覚に大きな影響を与えないことが示唆された。今後は関節位置覚に影響を与える因子ついて、さらに検討をすすめていく。