理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 148
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骨・関節系理学療法
足関節底屈角度が足部外がえし筋力に与える影響
野田 優希浦辺 幸夫安達 伸生神里 巌日當 泰彦
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抄録

【目的】足関節捻挫は、スポーツ現場で最も発生頻度の高い外傷のひとつであり、そのほとんどが足関節底屈位での内返捻挫である。再損傷することも多く、その予防のためのトレーニングとして足部外がえし筋である腓骨筋の筋力強化がよく行われている。そのため、底屈位での外がえし筋力を評価することが重要であると思われる。しかし、受傷肢位に注目し底屈角度別に外がえし筋力を明確に報告しているものはほとんど見当たらない。本研究は、健常者において足関節底屈角度の変化が、足部外がえし筋力に与える影響を明らかにし、捻挫後の足部機能を評価する際の基礎データとすることを目的とした。
【方法】対象は足部に既往がない成人男性12名12足(年齢23.4±1.8歳、身長173.4±4.2cm、体重64.2±8.2kg)、成人女性11名11足(年齢21.2±1.8歳、身長156.4±5.1cm、体重51.1±5.7kg)とした。足部外がえし筋力の測定には等速性筋力測定装置(Biodex Medical Systems)を用いた。角速度60deg/secと120deg/secで足関節底屈0°、10°、20°の足部外がえし筋力を測定し、Peak Torqueを体重で除した値(PT体重比)で評価した。角速度の違いによるPT体重比の比較には対応のあるt検定、男女の比較には対応のないt検定、それぞれの角速度における角度別の比較には一元配置分散分析を用いた。危険率5%未満を有意とした。なお、本研究はH大学大学院保健学研究科の倫理審査委員会の承認を得て行った。
【結果】底屈0°、10°、20°のPT体重比は角速度60deg/secでは、男性でそれぞれ38.3±11.7、39.1±8.0、38.7±9.0、女性で34.0±9.1、35.6±9.0、36.1±11.1であった。角速度120deg/secでは、男性でそれぞれ32.1±8.9、32.0±8.8、32.9±8.1、女性で30.4±6.6、31.9±5.7、30.0±7.6であった。足部外がえし筋力の角速度別PT体重比は男女共すべての底屈角度において60deg/secの方が120deg/secよりも大きな値となった。(男性:p<0.01、女性:p<0.05)。男女間でPT体重比に有意な差はみられなかった。足関節底屈0°、10°、20°それぞれの角度における足部外がえし筋力のPT体重比は、60deg/sec、120deg/sec共に有意な差はみられなかった。
【考察】本研究において、足関節底屈角度別の足部外がえし筋力に有意な差は認められなかった。このことから、足部に重篤な既往のない対象は足関節底屈0°から20°の範囲において一定の筋力を発揮できることが分かった。また、足部の筋力発揮が角速度により影響を受けること、PT体重比に男女差はないことが確認された。今回の測定は60deg/sec、120deg/secで行ったが、スポーツおよび日常生活ではより速い角速度での運動が要求されることから、今後は角速度の更なる検討も必要である。
【まとめ】健常者では足関節底屈0°から20°の範囲において、一定した足部外がえし筋力を発揮できることが示唆された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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