抄録
【目的】
われわれは足部と骨盤のアライメント障害に対するマニュアルセラピー、体幹に対する安定化運動に加え、足底板を併用することで良好な結果を得ている。今回、足部アライメントを矯正することで腰痛が改善した腰痛症例を通じ、足底板の適応と除去の時期を検討したので報告する。
【方法】
対象症例は足部アライメントと骨盤に非対称性を有し、片側性の腰痛を呈する女性3例(20歳代、50歳代、70歳代)である。評価は当院の評価チャートに順じて理学検査を行った。さらに症状の変化を比較するため、上後腸骨棘、腰方形筋、梨状筋の圧痛検査を行った。治療内容は骨盤と体幹のマニュアルセラピー、足部アーチ保持練習、そして足底板であった。1週毎に理学検査を行い、最長6ヶ月間の経過観察を行った。
【結果】
20歳代症例は足底板挿入後1週目より腰痛が軽減し、1週目の終わりに足底板を除去した。2週目後半に腰痛が再現したが、自主トレーニングと生活指導のみで軽減した。3ヵ月後腰痛の訴えは認められていない。50歳代症例は治療開始後より腰痛が軽減し、6週目に足底板を除去した。しかし、8週目に左殿部痛が再度出現したが、自主トレーニングと生活指導のみで症状は改善し、3ヵ月後腰痛の訴えは認められていない。70歳代症例は2週目に症状はほぼ消失した。4週目に足底板を除去した。5週目、再度、左殿部痛が認められたが、自主トレーニングと生活指導のみで疼痛は軽減した。6ヵ月後、疼痛の訴えはない。
【考察】
下肢アライメント障害に起因した腰痛症に対して、足底板が活用される場合が多い。しかし、足底板の適応基準、除去する際の指標など、疑問点は多い。今回の3症例は足部と骨盤のアライメント障害による片側性の腰痛が認められたため、従来の治療に加え、足底板を用いた。われわれが用いた適応基準は骨盤高を適応させるように足底板を挿入し、その際疼痛が軽減し、自動運動が改善するものとした。結果、3症例とも足底板挿入後、短期間のうちに腰痛軽減が可能であり、適応基準の妥当性が確認された。除去する際の指標は足底板非挿入時に対称性が獲得された場合とした。しかし3症例とも除去後、1週間後に再度症状が再現したことから、非挿入時に1週間程度の観察が必要と思われた。今後更に症例数を増やし、より確立された評価と治療の検討を行っていく必要があると思われる。