理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 546
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骨・関節系理学療法
腱板修復術後セルフエクササイズに感覚フィードバックを応用した腱板機能訓練の試み
吉田 真一小塚 和豊大熊 康弘玉川 智子正能 千明荻野 拓也泉川 幸恵橋口 宏
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抄録
【目的】腱板断裂術後における腱板機能訓練はセルフエクササイズ(ex)として行うことも重要である.しかし,セルフexでは運動方向や肢位を修正される機会がないため,不良肢位で実施している症例を少なからず経験する.今回,セルフexにペットボトルを使用し,水の揺れをフィードバックとして利用した腱板機能訓練が機能改善にどの程度有効か検討した.
【方法】腱板以外の上肢・体幹に損傷がなく,両側断裂でない鏡視下腱板修復術(ARCR)を行った24症例を対象とし,腱板機能訓練にペットボトルを使用した群とセラバンドを中心としたコントロール群に無作為に分けた. ペットボトル群は,平均年齢60.0歳,断裂形態は完全断裂(小断裂は2例,中断裂4例,大断裂2例)8例,不全断裂(滑液包面断裂3例,関節包面断裂1例)4例であった.コントロール群は,平均年齢61.0歳,完全断裂(小断裂1例,中断裂2例,広範囲断裂1例)4例,不全断裂(滑液包面断裂6例,関節包面断裂2例)8例であった. 肩外転筋力の測定はマイクロフェットを用い,パット装着位置は肩峰より15cmとした.椅子座位で肩甲骨面上30°,60°,90°の最大等尺性収縮を5秒間行った.再現性向上のため,長さ調節可能な固定ベルトを取り付けた. 計測は,術前,腱板機能訓練開始日,訓練開始後1週おきに10週後までの5回を合わせた計7回行った. ペットボトルでの腱板機能訓練は水の揺れをフィードバックするように指導した.肩外転筋力の推移と両群間の比較を検討項目とし,統計学的処理は一元配置の分散分析,t-testを用い,危険率5%未満を有意差ありとした.
【結果】すべての角度でペットボトルを用いた群とコントロール群で肩外転筋力の改善に有意な差を認めなかった.筋力の経時的変化は,30°において腱板機能訓練開始日(ペットボトルを用いた群:コントロール群)は57.8lb:52.2lb,以下2週後78.6lb:80.6lb,10週後106.7lb:93.7lbと,腱板機能訓練開始日と10週後の間で両群ともに統計的に有意な上昇を認めた.
【考察】腱板機能訓練にペットボトルを用いた群はセラバンドを使用した群と筋力の改善において差はなく,同様に有意な改善効果を認めた.ペットボトルを用いた訓練は運動時に振動や音を生じさせ,触覚や聴覚の感覚系からのフィードバックを得られる.正しい運動と誤った運動では水の動きが異なるため,自ら運動を修正することができる.水の揺れから得られる反力は抵抗となり,筋機能改善につながったと考える.今回の研究により,感覚系へアプローチした運動は肩外転筋力の改善に有効で,セルフexを正確に行えると考える.
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© 2008 日本理学療法士協会
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