理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 579
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骨・関節系理学療法
振り出し補助装具の作製(股関節装具)
股関節屈曲モーメントの増加と対側立脚相アライメントの関係
松田 憲亮梅田 泰光白石 伸也
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抄録

【はじめに】振り出し補助を目的とした股関節装具を作製した.今回,ポリオによる右下肢振り出し困難な症例を通じて,股関節装具の効果検証を行った為,その結果について報告する.

【症例紹介】年齢50代女性,以前より右下肢ポリオの為,片松葉杖歩行であったが,平成19年5月左股関節RAO術後,荷重痛を呈し,片松葉杖歩行困難であった.右下肢振り出しはぶん回し様であり,対側の左立脚相では体幹左側屈,左骨盤後方回旋を強め,左股関節荷重痛を認めた.

【股関節装具の特徴】装具は体幹ベルト,下腿カフベルト,股関節内転ゴム,股関節屈曲ゴムの4つで構成され,股関節内転力を固定し,屈曲力を調整する事で症例と歩き易さを調整した.股関節内転・屈曲ゴムはベルクロにて簡便に着脱可能としている.

【方法】股関節装具は股関節内転力1.0kgにて固定,屈曲力を0.75,1.0,1.25,1.50kgの4種類とし,裸足,足部装具のみの歩容を比較,また10m歩行速度を比較検討した.画像解析にはscion imageを使用,矢状面上にて右股関節伸転,体幹伸展角度を計測し,前額面上では左立脚中期における両肩峰を結ぶ水平角度及び両ASISを結ぶ骨盤水平角度を計測する事で歩容の変化を検討した.両肩峰及び骨盤水平角度については,左回りをプラスとした.

【結果】画像解析から,矢状面上では裸足時体幹伸展-9.1°,股関節伸転5.9°,股装具屈曲力1.25kg時体幹伸展-3.7°,股関節伸展10.6°であった.前額面上でも裸足時両肩峰水平角度11.1°,骨盤水平角度10.8°に対し,股装具屈曲力1.0kg時両肩峰水平角度3.4°,骨盤水平0°となり左立脚中期における姿勢アライメントの改善が観測された.10m歩行速度は,股装具による股関節屈曲及び体幹伸展モーメントの増加に伴い,増加する傾向にあった.

【考察】股関節装具の特徴として,体幹と下腿のベルトを伸縮性ゴムで結び,股関節屈曲と内転の二関節筋作用を作っている事である.また,内転ゴムは体幹との連結を作る為,右下肢立脚後期で作られる適度な屈曲モーメントとつり合う体幹伸展モーメントを作り出す効果を担っていると考えられた.画像解析の結果より,股関節装具を使用し遊脚相における適度な股関節屈曲モーメントを与える事で下肢振り出し能力の改善と対側の立脚相アライメントの改善が生じていると考える.また二次的効果として,左股関節荷重痛軽減及び10m歩行速度の増加に繋がっている事が示唆された.

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© 2008 日本理学療法士協会
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