理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 585
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骨・関節系理学療法
高齢慢性有疾患者に対する体幹の柔軟性について
第4報 セルフエクササイズ移行による効果の検討
伊藤 梢小川 峻一竹ヶ原 智行久保田 健太隈元 庸夫伊藤 俊一
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抄録

【目的】
演者らは,以前より高齢慢性有疾患者に対する体幹の柔軟性の改善はADLに影響を与えることを報告してきた.結果,柔軟性の改善により一部身体機能は改善するがその継続には限界があり,機能維持のためのセルフエクササイズ(以下,self ex.)への移行と定期的follow upの必要性,さらに心理面の検討が必要であることを報告した.
今回我々は,課題となったself ex.移行後の身体機能変化を検証するとともに患者立脚型評価による心理的影響について検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は,研究開始前より過去2週間以上,身体機能に変化のみられない高齢慢性有疾患者23名(平均年齢73.8歳)とした.
方法は,対象に体幹柔軟性の改善目的としてPost Isometric Relaxation ex.(以下,PIR ex.)を2週間施行し,その後体幹柔軟性改善効果を加味したself ex.を4週間実施させた.PIR ex.施行前(以下,初期評価),self ex.実施前(以下,2w後評価),self ex.実施2週間後(以下,self 2w後評価),self ex.実施4週間後(以下,self 4w後評価)に各々評価を行い身体機能変化を比較検討した.
評価項目は,Finger Floor Distance,最大10m歩行時間,Timed Up and Go testとした.また初期評価時とself 4w後評価時に心理面の評価としてMOS Short-form36-Item Health Servey(以下,SF‐36)を測定した.self ex.の実施状況の把握として実施状況を調査し,4週間のex.実施率を算出した.
統計はSPSS統計を使用し,統計処理には,Friedman’s順位検定,Wilcoxon t-test with Bonferroni correctionを用い,有意水準は5%未満とした.
【結果と考察】
4週間のself ex.実施率は71.1%の実施状況であった.2w後評価では初期評価と比較し,すべての身体機能項目において有意な改善が認められた.2w後評価時に向上した身体機能は,self 2w後評価,self 4w後評価において有意な差は認められず,改善効果を維持した.心理面の評価では,SF‐36の下位項目である活力が有意な向上を認めた.
以上の結果から,self ex.への移行は,身体機能維持に有効であると考えられた.しかし身体機能は体幹柔軟性の向上のみで維持されるものではなく,今後self ex.へ移行した長期追跡調査,および他の機能変化も検討する必要があると思われた.さらに心理面の向上は行動変容をもたらすきっかけと成り得るが,具体的なADLに与える影響に対して検討する必要もあると考えられた.

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© 2008 日本理学療法士協会
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