理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 897
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骨・関節系理学療法
前十字靱帯再建術後における筋力回復について
装具装着期間の差において
田中 剛原 順子田中 真一江本 玄(MD)
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抄録

【目的】前十字靱帯(以下ACL)損傷における再建術後の理学療法において、術後早期の筋力回復は重要課題のひとつとして挙げられる。筋力トレーニングに対する方法および方針は様々であり、多くの研究が実施されている。今回、再建術後の装具装着期間が、筋力回復に影響を与えるのではないかと考え、大腿四頭筋およびハムストリングスの筋力回復について調査したので報告する。

【対象および方法】対象は、2006年5月~10月の間に当クリニックにおいて骨付き膝蓋腱を用いてACL再建術を行った16膝(男性5膝、女性11膝)。A群を装具装着3ヶ月以上(装着期間:105.6±24.0日)とし、7膝(男性2膝、女性5膝)、平均年齢23.6±8.8歳、B群は3ヶ月未満(装着期間:71.3±10.6日)とし、9膝(男性3膝、女性6膝)、平均年齢22.9±11.1歳。筋力測定はCSMI社製CYBEX HUMAC NORMを用い、再建術前、術後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力を60deg/sec等速性収縮にて測定し、体重トルク比に換算した。統計処理には2要因の分散分析を行い、多重比較検定にはfisher’s protected least significant difference を用い、危険率5%未満を有意とした。

【理学療法】術後の理学療法プログラムは両群とも同様に行い、術後翌日より全荷重での歩行を実施した。筋力トレーニングにおいては、術後翌日よりknee brace下にてベッド上で非荷重位でのトレーニングを行い、術後1週より膝装具を装着し、荷重位でのトレーニングを中心に行った。術後8週以降は段差を使ったトレーニングなどを行い、12週以降より徐々にランニングを行った。入院期間はA群:8.0±3.5日、B群:8.4±2.7日であった。

【結果】A群・B群間での、術後の筋力回復において有意差は認められなかった。また、両群の術前、術後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月での筋力回復においては術後3ヶ月と12ヶ月、6ヶ月と12ヶ月の比較において有意に増加していた。A群:大腿四頭筋72.6N/m→214.6N/m(P=0.001)、110.7N/m→214.6N/m(P=0.008)、ハムストリングス60.4N/m→136.3N/m(P=0.007)、79.0→136.3N/m(P=0.03)B群:大腿四頭筋97.3N/m→213.8N/m(P=0.001)、117.3N/m→213.8N/m(P=0.005)、ハムストリングス60.7N/m→133.8N/m(P=0.0001)、56.7N/m→133.8N/m(P=0.000)。

【考察】現在、世界のACL再建術後の理学療法プログラムでは装具を使わないという文献が多々発表されている。今回の調査で装具装着期間と筋力回復には相関がみられなかった。このことから、筋力の回復がなくても装具装着期間の短縮は可能であると推察される。また、両群において術後6ヶ月以降に筋力回復がみられたことから、もう少し早い時期から段階的な筋力トレーニングを行うべきだと感じた。今後は、さらに早期に装具を除去した群との比較を検討していくとともに、装具をはずすことによる再断裂や不安定感に対して、追跡調査を行っていきたい。

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© 2008 日本理学療法士協会
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