抄録
【目的】腓骨筋の選択的トレーニングの必要性に関して、長腓骨筋(PL)の反応時間や底背屈時の前脛骨筋(TA)との活動の特性について、足部不安定性や足根洞痛を指標として検討した。
【方法】対象は高校蹴球部男性22名(平均年齢16 ±1.1 歳)とした。評価項目は右足部の捻挫既往と足根洞痛、徒手的不安定性は前方引き出しと内反ストレステストを実施した。動的不安定性は4種類の片脚立位時間(閉眼にて平地と柔軟板、開眼にて金属と木製不安定板)を各2回行なった。測定項目はPLの反応時間(PL-RT)と連続5回の底屈(PF)背屈(DF)動作時におけるPLとTAの最大随意収縮時の筋活動に対する比(%MVC)を求めた。全対象者及び保護者に研究参加の同意を得た上で実施した。PL-RTは落とし台にて、外部刺激を遮断し突発的に最大20°傾斜させ、動き始めた時から最初の筋放電を反応点とした。PF-DF動作は長座位で自動運動にて常時PLの収縮を意識させ、最大努力にて実施した。測定値よりPL%MVCとTA%MVCの比(P/T比)と各%MVC及びP/T比の変動係数(CV)を求めた。筋活動は表面筋電図Noraxon社製Myosystem2400にてデュアルセンサーを用い記録した。MVCの測定はハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を用いた。各測定項目において群間比較はMann-Whitney検定、級内相関係数(ICC)、相関係数にはSpearmanとPearsonを用いた。なお全ての統計解析にはSPSS15.0を用いて行った。
【結果】動的不安定性の各片脚立位時間は、閉眼平地(平均14.8±5.2秒)、閉眼柔軟板 (平均2.4±1.5秒)、開眼木製不安定板(平均1.4±0.8秒)、開眼金属製不安定板(平均10.6±8.1秒)であった。捻挫の既往1回以上が16名(73%)おり、その内、足根洞痛有りが8名、どちらかの徒手的不安定性が有り、左右差を認めたものが5名であった。これらの評価から足根洞痛と徒手的不安定性の有無を群分けの指標とした。痛有・不安定性及び左右差有群(4名)と痛無・不安定性無群(8名)において、PF時のP/T比のCVに有意差があった(p<0.05) が、PL-RT(平均116.9±2.3ms)において有意差はなかった。PF時のP/T比とTA%MVCとの間には強い負の相関がみられた(r=-0.80 p<0.01)。PL-RTはPL-HHD値(平均34.7±3.9kg)においてPearsonに負の相関がみられた(r=-0.50 p<0.05)。
【考察】足根洞痛や徒手的不安定性を有する足部では、PF時でのTAの活動にバラツキがあり、荷重位においても下腿の前方滑動(距骨不安定性)に与える影響が予測された。また、PF時にPLの機能である距骨下関節の締め付け(固定)が選択的にされていないため、緩みに対するTAによる代償動作とも考えられた。PL-RTは捻挫の頻度も低く影響が少なかったと思われる。
【まとめ】足根洞痛や徒手的不安定性は底屈時のTAやPLのバラツキや選択的収縮に関連がみられ、臨床上の介入の必要性が示唆された。