理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 960
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骨・関節系理学療法
サッカー選手における距骨後突起骨折後のリハビリテーションの実際
福原 大祐石川 大樹露木 敦志前田 慎太郎浅野 晴子谷川 直昭中澤 加代子園田 剛之小寺 麻美
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抄録

【はじめに】
当院における距骨後突起骨折の治療法は、受傷後早期例では下腿ギプス固定による保存療法を行い、陳旧例で骨折部が偽関節となっている症例で運動制限や局所注射などの保存療法で改善しない場合には骨片摘出術を選択している。また、それらのリハビリテーション(以下、リハ)の方法は保存療法と手術療法では異なる。
今回、我々は距骨後突起骨折後のサッカー選手における競技復帰までのリハの実際を報告する。
【対象と方法】
当院にて2003年5月~2007年5月までに距骨後突起骨折と診断された28例中、サッカーにて受傷した17例(全例男性)を対象とした。そのうち保存療法を行った症例は7例(14歳~31歳:平均17.6歳)、手術療法を行った症例は10例(14歳~19歳:平均15.9歳)であった。これらの症例に対し、インステップキックの開始時期と試合への復帰時期およびリハの方法について比較検討した。なお統計学的手法にはMann-WhitneyのU検定(p<0.05)を用いた。
【リハ】
保存療法群(以下、保存群)はギプス固定を3~4週とし、ギプス除去後は関節可動域訓練中心の緩やかなリハを行った。また過度な底屈により脛骨後方と踵骨とで距骨後突起のインピンジメントが起こらないように指導した。手術療法群(以下、手術群)では、術後早期にバランス訓練と消炎鎮痛を目的とした物理療法を行った。
荷重はいずれも可及的全荷重とした。両群ともに、ランニングは4~5週、インサイドキックは5~6週、インステップキックは7~8週、試合への復帰は9~10週を目標とした。
【結果】
インステップキック開始時期は保存群で治療開始後60.3±45日、手術群で術後55.3±24日であった。また試合復帰を許可した時期は保存群で治療開始後72.1±38日、手術群で術後64.7±59日であった。いずれも両群間では有意差を認めず、全例、元の競技に復帰することができた。
【考察】
治療の流れは両群で異なるものの復帰時期には大きな差がない。これは保存群の場合、受傷後3~4週のギプス固定を必要とし、手術群でも術後3~4週は急性炎症期のため患部の積極的なリハは行えないので、どちらの治療法を選択しても治療開始後3~4週間は足関節の最大底屈を要する様なリハが制限されたためと推測した。
距骨後突起骨折は足関節内反捻挫ないしは底屈強制の受傷歴を有する症例が多いので、トレーナーを有するチームの選手の方が受傷後数日以内に来院するケースが多く、保存療法が選択されることが多かった。またトレーナーとの連携によって院外でもアスレチックリハを行えたことが早期復帰につながったものと思われた。
サッカー選手における距骨後突起骨折後,保存療法、手術療法ともその特長を考慮してメディカルリハ、アスレチックリハを行うことが重要であり、結果、良好な経過を辿り競技復帰に至ることができた。

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© 2008 日本理学療法士協会
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