抄録
【研究の背景と目的】
足底板を用いた治療を行う過程で、シューズに足部を合わせる工程がある。いかに良い評価を行い、良いパッドを作製しても、それが足部の正しい位置に配置していなければ、良い結果は生まれない。そこで本研究は、実際に人がシューズを履く時、足部をシューズのどの部位に合わせるか、またシューズの大きさ・形状によって、足部を合わせる位置がどのように変化するかを検証することを目的とした。
【対象と方法】
足関節・足部に既往が無く、本研究に同意を得た成人男性5名を対象とした。第5中足骨底部にマーキングを行なった後、足底板ベースを挿入したシューズを履き、歩行することでマーキングを足底板ベースに転写する。テストは3回施行し、転写部位の平均地点を採型ポイントとして採用した。実験は1)種類の異なる4サイズのシューズ、2)同サイズで踵部形状が異なる(ストレート形状・カーブ形状)シューズで行なった。踵最後端~第5中足骨底までの距離をα、足底板ベース最後端~マーキング転写部位までの距離をβと定義し、その距離を計測した。α・βの数値を元に、各サイズのシューズを履いた際、靴のどの部位に足部を合わせていたか。また靴の形状による差異があったのかを比較・検討した。
【結果】
サイズによる比較において、一症例が小さなサイズと大きなサイズのシューズを履いた時、そのβ値間には大きな差は見られず、総じて足部をシューズの後方部に合わせて履く傾向が認められた。しかし、そのα・β間のデータには規則性は見られなかった。その一方、各症例が一サイズのシューズを履いた時、症例によってαの数値が異なるにも関わらず『β=α+靴特有の値』となる規則性が認められた。また、この靴特有の値は最小で0.32cm、最大で1.34cmと、靴ごとに大きな差が見られた。次に、踵形状による比較では、ストレート形状のシューズで、靴特有の値が0.13cm、カーブ形状のシューズで1.10cmと、同一サイズにも関わらず、数値に大きな差異が見られた。
【考察】
シューズに対する足部の位置は、シューズ開口部の位置に依存するため、概ね、靴の後方部に合わせるものと考えられる。しかし、その数値に規則性がないことから、後方部には合わせるものの、靴によって詳細な位置が異なることが分かる。一サイズのシューズを全症例が履いた際のデータに規則性が見られることや、踵部形状の異なるシューズの比較において、靴特有の値が異なることから、シューズに対する足部の位置は、シューズのサイズではなく踵部形状に依存することが推測される。実際、シューズ開口部の最後端からシューズ内部最後端までの距離を計測すると、靴特有の値の近似値を示した。以上のことから、αと靴特有の値を図ることで足部採型は可能と言え、このことは足底板を正確に作製するための一助になるのではないかと思われた。