理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1368
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骨・関節系理学療法
THA術後患者の転帰に関連する因子の検討
小田 香奈恵木村 美子大峯 三郎舌間 秀雄中元 洋子古田 奈美賀好 宏明大西 英生蜂須賀 研二
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抄録

目的】
近年、入院期間の短縮化のために、早期からのリハビリテーション(以下、リハビリ)介入が図られるようになってきた。当院での人工股関節全置換術(以下、THA)プロトコルは、術後約3週間の退院である。そこで今回、当院でTHA後にリハビリを施行した患者の転帰(自宅退院群と転院群)に関して、筋力、10m歩行スピードと人的な環境因子(介護者の有無)の面から検討を加え若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
対象は2005年5月から2006年8月に当院で一側THAを施行された65名の内、協力が得られなかった者、脱臼を生じた者、急遽退院となった者を除いた49名(男性6名、女性43名、年齢:67±8歳、身長:151±7cm、体重:53±9kg、BMI:23±3、術後からのリハビリ実施期間:25±5日)であった。疾患の内訳は、片側変形性股関節症35名、両側変形性股関節症6名、大腿骨頭壊死2名、関節リウマチ6名であった。筋力は、術側及び非術側の大腿四頭筋及び中殿筋の筋力をハンドヘルドダイナモメーターにて3回測定し、最大値を体重で割り標準化した。自宅退院群と転院群間の筋力及び10m歩行スピードの相違はt検定を用いた。自宅退院群と転院群での環境因子間での分析はχ2検定を用いた。有意水準はP<0.05とした。
【結果】
自宅退院群は35名、転院群は14名であった。両群の性別、年齢、身長、体重、BMI、リハビリ実施期間には有意差はなかった。リハビリ開始時の下肢筋力は両群間で有意差がなかった。退院時は、転院群の術側及び非術側の中殿筋筋力のみが、自宅退院群と比べ有意に低下していた。中殿筋筋力と10m歩行スピードの関係は、転院群において自宅退院群と比較して低下している傾向がみられたが、有意差はなかった。介護者がいない者は、自宅退院群は35名中11名、転院群では14名中10名であった。環境因子は、転院した群において介護者がいない者が有意に多かった。
【考察】
今回、自宅退院群において転院群よりも術側及び非術側中殿筋筋力が有意に強いことが示唆された。中殿筋は、立脚期の安定性を得るために必要不可欠な筋である。寺田等は、THA術後患者が正常歩行を獲得する要因として、中殿筋の重要性を報告している。中殿筋筋力と10m歩行スピードの関連はみられなかったが、安定した実用性の高い歩行を獲得するために中殿筋筋力は重要といえる。人的な環境因子は転帰に何らかの影響を及ぼしているといえる。要因は個別性が高いため、リハビリ開始早期から在宅での生活状況を把握し、生活場面を想定した具体的なアプローチと社会福祉資源の利用を助言することで、円滑な自宅退院へと結びつけることが可能と考えられる。

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© 2008 日本理学療法士協会
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