理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1404
会議情報

骨・関節系理学療法
肩腱板訓練器の試作(第一報)
正常肩における筋電図を用いた検討
権上 和彦柳澤 俊史家高 伸行久保 昌平佐藤 晴美宇野 享子計良 智仁佐藤 美奈子坂野 裕昭
著者情報
キーワード: 棘上筋, 三角筋, 筋電図
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】肩甲上腕関節において、三角筋中部線維(以下三角筋)に対する棘上筋の相対的筋力低下は安定した上腕骨の支点を形成できず周辺組織に損傷を招くとされている。山口らは三角筋が活動しない範囲で棘上筋の活動を促す事により棘上筋の相対的筋活動量の増加を起こせると報告している。そこで我々は棘上筋の選択的な活動を目的とした訓練機器を試作し、筋電図を用いて一般的に用いられるセラバンドによる肩関節外転訓練との比較と、訓練器の使用が棘上筋訓練として有効かを検討した。
【訓練器の詳細】機器は縄跳びの柄に釣り糸でボールを結び付け、柄を中心にボールの回転を維持させるものである。肢位は肩下垂位・肘90°屈曲・手中間位とした。
【対象と方法】対象は健常男性5名5肩(平均年齢36.2歳)。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し了解を得た。測定筋は棘上筋と三角筋とした。筋電計(日本光電社製 ポリグラフTEG‐1000)を用いて測定し三角筋は表面電極、棘上筋はワイヤー電極にて導出しワイヤー電極の刺入は医師が行った。各筋の最大等尺性収縮時の積分筋電値(以下IEMG)を測定したのち、訓練器の運動(以下訓練器群)とセラバンドによる運動(以下セラバンド群)を行った時の1秒間のIEMGを測定した。さらに最大等尺性収縮時のIEMGを100%とした各筋のIEMG(%IEMG)と、三角筋の%IEMGを1とした棘上筋の比率を求めたうえで訓練器群とセラバンド群の比較をした。統計処理にはMann-WhitneyのU検定を用い、危険率5%で有意差を求めた。
【結果】%IEMGによるセラバンド群の棘上筋は27.6%、三角筋は16.8%。訓練器群の棘上筋は16.1%、三角筋は3.5%であった。一方、三角筋の%IEMGを1とした棘上筋の比率の平均はセラバンド群1:1.6、訓練器群1:4.6であり訓練器群の方がより三角筋を抑制した状態で棘上筋を活動させる傾向がみられた。(p=0.0758)
【考察】%IEMGより棘上筋に高い活動を促すにはセラバンド群が有用と思われた。しかし三角筋の%IEMGを1とした棘上筋の比率では統計的有意差は得られなかったが、訓練器群の方が高い傾向が得られた(p=0.0758)。したがって三角筋の活動を抑えた棘上筋の選択的な活動を促すには訓練器群が有用な可能性がある。訓練器はボールの回転を維持させるために水平面上の柄の微小な回転が必要となる。手・肘関節を保持し体幹・肩甲帯による代償も行えない為、上腕骨が肩甲上腕関節を支点とした円錐運動を行う事となる。この肩下垂位における肩甲上腕関節の支点形成の為、三角筋の活動を抑え棘上筋の活動を促せると考えられた。今後、症例数を増やして再度検討する必要があると思われた。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top