理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1414
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骨・関節系理学療法
骨盤大腿リズムにおける骨盤後傾量と大腿直筋の筋活動との関係
本島 直之加茂野 有徳櫻井 愛子
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抄録

【はじめに】
骨盤大腿リズムとは,股関節屈曲運動時の骨盤後方傾斜と大腿挙上の協調した動きを指す.筆者らの過去の研究では,静止立位で骨盤が後傾位の場合,骨盤大腿リズムの骨盤後傾量の増大がみられ,腸腰筋よりも多関節筋である大腿直筋が収縮しやすい状態であることが示唆された1,2).しかし,大腿挙上運動時における骨盤傾斜量の差により,大腿直筋の収縮する時期が異なるかは確認していない.そこで本研究では,大腿直筋の活動開始時期を,表面筋電図を用いて計測し,骨盤大腿リズムとの関係を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は本研究に同意を得た健常成人4名とし,三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製)と筋電図計測システム(4assist社製)を同期し計測を行った.股関節屈曲角度に対する骨盤傾斜角度を算出するため,静止立位から2秒間で90°股関節屈曲をするよう口頭指示し,身体に貼付したマーカーより大腿挙上角度と骨盤傾斜角度を算出した.各被験者において,大腿挙上角度に対する骨盤後傾角度をプロットし,その回帰直線の傾きを骨盤大腿リズムの骨盤後傾量と定義した.表面筋電図は,サンプリング周波数1kHzにて静止立位と上述の股関節屈曲運動を測定した.測定後10~350Hzのバンドパスフィルタをかけ,全波整流を行った.大腿直筋の活動開始時点は,静止立位時の筋放電量の平均値の3SDを超えた時点と定義し,その時の大腿挙上角度を算出した.骨盤大腿リズムの骨盤後傾量,大腿直筋の活動開始時点それぞれの検定には一元配置の分散分析,Tukey’s HSD testを用いた.
【結果】
骨盤大腿リズムは,大腿挙上角度65°まで,被験者A>B>C>Dの順に大腿挙上角度に対する骨盤後傾量が大きい傾向にあり,AはDよりも骨盤後傾量が有意に大きかった(p<0.01).大腿直筋の活動開始時点はA>C>B>Dの順に活動開始時点が早い傾向にあり,Dは他の3人よりも活動開始が有意に遅かった(p<0.05).
【考察】
骨盤大腿リズムと活動開始時点の結果から,同じ股関節屈曲運動であっても,骨盤後傾量が大きい場合は大腿直筋の筋活動開始時期が早く,骨盤後傾量が小さい場合は大腿直筋の筋活動が遅い傾向が認められたため,骨盤後傾量が大きいと大腿直筋が過活動すること,骨盤後傾量が小さいと腸腰筋の収縮が起きていることが推測される.本研究の結果より,骨盤大腿リズムにおける骨盤後傾量を減少させるためには,大腿直筋の過活動を減少させ,腸腰筋の活動を引き出すことの重要性が示唆された.今後は,上述の結果をさらに検証するために被験者数を増やして分析していく必要があると考える.
【参考文献】
1)立位姿勢と骨盤大腿リズムの関係:静岡理学療法ジャーナル14,72,2006
2)股関節への負荷が骨盤大腿リズムに与える影響:理学療法学34,642,2007

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© 2008 日本理学療法士協会
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