理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1439
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骨・関節系理学療法
剣道に対する入谷式足底板の試み
足背部疼痛の持続により,症状が増悪した症例
岩永 竜也亀山 顕太郎
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抄録

【はじめに】我々は多くのスポーツ障害に対して、入谷式足底板を処方してきた。その多くはスポーツシューズに処方したものである。今回、裸足のスポーツである剣道競技者に対し、入谷式足底板の処方と足底板に対する補助手段を用いて疼痛が改善し、競技復帰したので報告する。
【症例紹介】19歳女性。高校剣道部に在籍していた平成18年9月頃から足背部痛が出現する。多くの医療機関で治療を受けたが疼痛が改善せず、強い痛みが残存していた。同年12月当院初診、X線所見では、舟状骨に骨棘がみられた。左ショパール関節症と診断され理学療法を開始した。初診時の強い疼痛は裸足の競技のためテーピングを用いた足部誘導を行い改善された。僅かな疼痛が持続していたが、競技復帰可能であった。平成19年4月大学に入学後、剣道部に入部し競技を継続していた。同年9月に疼痛が増強したため当院を受診。X線所見では、舟状骨の変形が増悪していた。剣道以外の歩行時も疼痛が出現し、跛行がみられた。
【方法】歩行時の疼痛に対して、通学などの日常の靴に入谷式足底板を処方した。競技用には剣道用足袋を用い、入谷式足底板を作製した。剣道用足袋の上からミズノ社製登山用足首サポーターにて、内果挙上誘導を追加した。
【結果】歩行時の疼痛と跛行は、靴に作製した入谷式足底板にて改善した。しかし、剣道への競技復帰では、疼痛が残存していたため、入谷式足底板を作製した剣道用足袋と足首サポーターを用いることで、競技中の疼痛は消失した。
【考察】本症例は疼痛を僅かながらも残存したまま競技を継続し、左足背部の疼痛が増強した。スポーツシューズを用いた競技であれば、足背部の疼痛コントロールは容易であったと推測されたが、裸足の競技であることと僅かな疼痛であったために、テーピングのみで競技可能と判断し、増悪させた反省すべき症例である。今回、左足背部の疼痛を残存させることは、より舟状骨の変形を進行させる可能性が高いと考え、剣道用足袋に入谷式足底板を作製した。剣道の左足は、裸足で踵を挙上して前足部のみで移動や床を蹴る動作を繰り返す特有のスポーツである。剣道用足袋に足底板のみでは、中足部と後足部の足底部が足底板と密着せず、足部誘導が不十分であったため、足首サポーターを用いて密着させ足部誘導を補った。また、足底板をより効果的するために、このサポーターの特徴である果部誘導を用い、内果挙上誘導を追加し良好な結果が得られたと考えられる。今回の剣道競技者の僅かな疼痛でさえ患部を増悪した経験から、外傷などの急性期を除くスポーツ障害において、テーピングのみでメカニカルストレスを十分に減じることが難しい場合は、足底板などで十分に足部誘導を行う必要があると考える。

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© 2008 日本理学療法士協会
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